認知症
認知症とは、いろいろな原因で記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす病気です。
高齢者に多く見られますが、若年層でも発症することがあります。認知症は進行性であり、早期に発見して対処することで進行が抑えられると言われており、早期から適切な対応が必要です。
また、認知症は介護とも密接な関わりがあり、認知症の進行により介護が必要となる方も多いです。
認知症の主な種類
認知症にはいくつかの種類があり、それぞれ原因や症状に違いがあります。また、最近はMCI (軽度認知障害)は、認知症を発症する一歩手前の段階が注目されており、そのタイミングからの対策も大切です。
アルツハイマー型認知症(最も多い)
特徴:脳の神経細胞が徐々に壊れ、記憶障害を中心に症状が進行する。
主な症状:
初期:新しいことが覚えられない、同じことを何度も聞く
中期:日付や場所が分からなくなる、料理や買い物が難しくなる
末期:身の回りのことができなくなる、会話が成り立たなくなる
血管性認知症
特徴:脳梗塞や脳出血などが原因で発症し、症状が階段状に進行する。
主な症状:
- まだら認知症(できる時とできない時の差が激しい)
- 手足の麻痺や歩行障害を伴うことがある
- 感情のコントロールが難しくなり、突然怒ることがある
レビー小体型認知症
特徴:幻視(見えないものが見える)やパーキンソン症状(手の震えなど)を伴うことが多い。
• 主な症状:
- リアルな幻視(小動物や人物が見えると言う)
- 日によって認知機能が変動する
- 手足がこわばる、転びやすくなる
前頭側頭型認知症
特徴:脳の前頭葉・側頭葉が萎縮し、人格や行動の異常が目立つ。
主な症状:
- 暴言や暴力的な行動
- 同じ行動を繰り返す(例:同じ道を何度も歩く)
- 社会的なルールを無視する(例:お店で勝手に物を取る)
認知症の初期症状
認知症は早期発見が重要です。以下のような症状は特に認知症を疑います。
① 記憶障害
- 最近の出来事を忘れる(例:「さっき食事したことを忘れる」)
- 何度も同じ話を繰り返す
なんとなく記憶力がなくなったという症状を家族や自身で自覚します。これが一番家族が察知できる異常です。
② 判断力の低下
- 買い物でお金の計算ができなくなる
- 料理の手順が分からなくなる
認知症が進むと、記憶力の低下のほか、判断力の低下を認めます。そのため運転免許更新には認知症の有無が重要となります。
③ 時間や場所の混乱
- 今日の日付や季節が分からなくなる
- いつも行く場所で道に迷う
いつもいくような場所で帰り道に迷ってしまったりすることがあります。
④ 性格や行動の変化
- 急に怒りっぽくなる
- 趣味や外出に興味を持たなくなる
一部の認知症(前頭側頭型認知症など)では、急に生活が変わったような症状が出る方がいます。
⑤ 幻覚・妄想
- 盗まれたと勘違いする
- 知らない人が家にいると感じる
いわゆる”ものとられ妄想”という症状です。物やお金が盗まれたという症状が出ます。
認知症の検査と診断方法
認知症の診断には、以下のような検査が行われます。
医師による問診
- いつから症状が出たか?
- どのような場面で困ることがあるか?
など、詳細に問診を行います。これにより拾い上げを行います。
認知機能テスト
実際にスコアを使って長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMMSEなどで、記憶力や計算能力を確認します。
実際にスコアを使うことで客観的な評価を行うことができます。
画像検査
MRI・CT検査で脳の萎縮や脳梗塞の有無を確認を行います。また、慢性硬膜下血腫や水頭症など治る認知症に似た病気もあり、そのような疾患がないかを調べます。
採血検査
ビタミンなどを評価して、ビタミン不足による認知症症状ではないかを調べます。
認知症の治療と対応方法
① 薬物療法
アルツハイマー型認知症には様々な薬が使用されます。また、レビー小体型認知症にも様々な薬剤の適応があります。
また、血管性認知症という脳梗塞による認知症では、脳梗塞予防のための血圧管理や血液をサラサラにする薬などを使用するケースもあります。
② 生活環境の工夫
- 分かりやすい環境作り(例:カレンダーを大きく表示、必要な物を決まった場所に置く)
- 毎日同じ生活リズムを守る
- 無理に訂正せず、穏やかに接する。否定しない
③ 介護とサポート
- 家族だけで負担を抱えず、介護保険サービス(デイサービス・訪問介護)を活用。
- 地域包括支援センターに相談するのも有効。
認知症は基本的には進行性であり、家族の負担が増えていく場合が多いです。そのため、介護サービスをしっかり使用しみんなでサポートをする(受けていく)ことが重要です。
認知症の予防方法
認知症の進行を遅らせるために、以下の生活習慣が推奨されています。
適度な運動
1日30分程度のウォーキングや体操が効果的。
バランスの良い食事
- DHAやEPAを含む青魚、野菜、大豆製品を積極的に摂る。
- 塩分や糖分を控え、血管を健康に保つ。
脳を活性化する習慣
- 読書、計算、パズルなど頭を使う活動を行う。
- 人と会話する機会を増やす
生活習慣病の管理
高血圧、糖尿病、脂質異常症は認知症のリスクを高めるため、適切な治療を受けることが大切です。特にMCIの段階の患者さんでは認知症を発症しないような対策が重要です。
まとめ
認知症は誰にでも起こりうる病気ですが、早期発見と適切な対応で、本人や家族の負担を軽減できます。
「最近物忘れが増えた」「家族の様子が変わった」と感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
【注意】本記事は一般的な情報提供を目的としています。診断や治療については、医師の診察を受けて適切なアドバイスを受けてください。