生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)の食事療法のポイント

生活習慣病(高血圧糖尿病脂質異常症など)は、日々の食生活と密接に関係しています。薬剤の治療も大切ですが、適切な食事を心がけることで、病気の進行を防ぎ、健康な生活を維持することができます。

ここでは、具体的な食材を挙げながら、食事療法のポイントを解説します。

高血圧のための食事療法

高血圧の管理には

  • 塩分を控える
  • 野菜、果物の積極的な摂取
  • コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える
  • 節酒

が重要です。また、禁煙も重要です。肥満は血圧の上昇に影響するため適正体重を維持しましょう。

*体重=身長(m)×身長(m)×25未満

塩分を控える

減塩のポイント

  • 1日の塩分摂取量を6g未満に抑える
  • 出汁やスパイス(コショウや昆布、かつお節、生姜、にんにく)を活用し、味の深みを出す
  • 加工食品(ハム、ソーセージ、漬物)を控える
  • 減塩しょうゆや減塩味噌を使用する
  • むやみに調味料を使わない
  • 麺類の汁は飲まない

などがあります。

下記サイトでは減塩商品を紹介してくれているので是非チェックしましょう。

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野菜、果物の積極的な摂取

野菜や果物は食物繊維を多く含み、血糖や脂の吸収を控えることができます。

また、カリウムやマグネシウムはカリウムは体内の余分なナトリウムを排出し、マグネシウムやカルシウムは血圧の安定しますので摂取が勧められます。しかし、とりすぎは注意が必要です。

カリウムが多い食材:バナナ、ほうれん草、トマト、サツマイモ

マグネシウムが多い食材:ナッツ類、海藻、大豆製品

カルシウムが多い食材:牛乳、小魚、チーズ、豆腐

コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える

脂質は種類に関係なく1gあたり9kcal(糖質、タンパク質は4kcal)あり、1gあたりのカロリーが2倍以上あります。そのため、油を多く含む食品の食べ過ぎには注意しましょう。

それぞれの食品のgごとのカロリーは下記の通りです。

栄養素エネルギー係数(kcal/g)
炭水化物(糖質)4 kcal/g
脂質9 kcal/g
タンパク質4 kcal/g
アルコール(エタノール)7 kcal/g
食物繊維0~2 kcal/g(種類による)

節酒

アルコール量で、男性で20~30mL以下、女性で10~20mL/日以下が目標です。

おおよそビールなら500mlのロング缶1本が目安です。

日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合、ウィスキー・ブランデーはダブルで1杯、ワインは2杯


糖尿病のための食事療法

糖尿病では「血糖値の急上昇を防ぐ」「適正なカロリーを守る」「バランスの取れた食事」が大切です。

糖尿病の方の食事の注意点

ポイント

  • 食物繊維を多く含む食材を摂る(野菜、きのこ、海藻)
  • ゆっくりと食べる
  • 糖質の多いジュースや菓子パンを控えめに

おすすめの食材

  • 低GI食品(玄米、大豆製品、全粒粉パン)
  • 野菜(ブロッコリー、キャベツ、ゴボウ)
  • きのこ類(しいたけ、えのき)
  • 魚(サバ、サンマ、鮭)

食事はバランスよく摂ることが大切です。また糖質は摂取後に血糖を上げやすく、食物繊維は血糖の上昇を抑える効果があります。野菜を積極的に摂るようにしましょう。

また、間食をしない規則正しい時間に食べるゆっくりと食べることも大切です。

適正なカロリーを守る

目安

  • 1日の摂取カロリーは身長・体重・活動量に応じて調整
  • 食事のバランスを「主食5割・主菜3割・副菜2割」でバランスの良い食事を目指す
  • 揚げ物や脂質の多い食品は控えめに

食事についてはバランスよく摂取するようにしましょう。摂取カロリーは体重換算で自分の適正なカロリーを知っておくようにしましょう。

適正なカロリーは、目標体重(BMI22〜25)×25〜35kcal/kg(エネルギー係数)です。60kgで考えると1500〜2100kcalとなります。 エネルギー係数とは下記の通りです

エネルギー係数は日中の活動量によってカロリーが違います。運動している人と、家で過ごしている人で体重が同じでも必要なカロリーが違うためです。

身体活動レベル活動の特徴エネルギー係数(kcal/kg 体重/日)
軽い身体活動量大部分が座位の静的活動25 ~ 30
普通の身体活動量座位中心だが通勤・家事、軽い運動30 ~ 35
重い身体活動量力仕事、活発な運動習慣がある35 ~

避けるべき食材

  • 白砂糖を多く含む菓子類、清涼飲料水
  • 揚げ物(フライドポテト、唐揚げ)

などがあります。上でも紹介しましたが、脂質は種類に関係なく1gあたり9kcalあるため、油が多い食材はカロリーが増えやすいです。

また、飲み物に入っている糖分は食事と関係なく摂るため、カロリーが増えていきやすい要因になります。糖質が多いと食後に血糖値が急激にあがりやすいため、糖尿病の方は控えめにする必要があります。

特に飲みすぎるとペットボトル症候群という、甘い飲み薬を大量に飲むことで著明な高血糖を起こす病気もあり、多量に飲むことはやめましょう。

高脂血症のための食事療法

脂質異常症の管理には、「適切な脂質の摂取」「食物繊維を増やす」「適正なカロリーを守る」が重要です。
にはほとんどエネルギーがありません。食物繊維はコレステロールの吸収を抑える働きがあります。

良質な脂質を選ぶ

まずは良質な油を摂ることが大切です。

避けるべき脂肪

  • 飽和脂肪酸(バター、ラード、加工肉)
  • トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニング、揚げ物)

牛脂、ラード、バター、ココナッツオイルなどに入っている飽和脂肪酸はLDLをあげる可能性があり、高脂血症の方はできるだけ控えた方が良い油といえます。

脂質は種類に関係なく1gあたり9kcal(糖質、タンパク質は4kcal)あり、1gあたりのカロリーが2倍以上あります。そのため、油を多く含む食品の食べ過ぎには注意しましょう。

積極的に摂るべき脂肪

  • 不飽和脂肪酸(オメガ3・オメガ9)
    • 青魚(サバ、イワシ、サンマ)
    • ナッツ類(アーモンド、くるみ)
    • オリーブオイル、えごま油など

積極的に摂るべき脂肪としては、不飽和脂肪酸があります。魚には不飽和脂肪酸が多く含まれているため、LDLコレステロールを低下させる働きがあります。魚料理を積極的に取り入れましょう。

食物繊維を増やす

水溶性食物繊維がLDL(悪玉)コレステロールを低下させる

  • 野菜(キャベツ、ほうれん草、ブロッコリー)
  • きのこ類(しいたけ、えのき、しめじ)
  • 海藻類(わかめ、昆布、もずく)
  • 大豆製品(納豆、豆腐)
  • 雑穀(オートミール、玄米)

食物繊維は、LDLコレステロールの吸収を抑える役割があり、積極的にとっていきましょう。

適正なカロリーを守る

高脂血症の方も糖尿病、高血圧の方同様に適切なカロリーを守ることは大切です。

ポイント

  • 1日の摂取カロリーは身長・体重・活動量に応じて調整
  • 食事のバランスを「主食5割・主菜3割・副菜2割」でバランスの良い食事を目指す
  • 揚げ物や脂質の多い食品は控えめに

ポイントは変わりはありません。また魚料理を多くすることがおすすめです。

避けるべき食品

  • 揚げ物(天ぷら、フライドポテト)
  • ジャンクフード(スナック菓子、インスタント食品)
  • 甘い飲み物(炭酸飲料、加糖コーヒー)

避けるべきものとしては、脂が多い食材です。牛肉は脂が少ない赤身を選び、不要な脂みはとるなどの工夫がおすすめです。適切なカロリー管理をする上でも、甘い飲み物は控えるようにしましょう。

生活習慣病予防のための共通の食事のポイント

  • 野菜を積極的に摂っていく
  • たんぱく質は魚・大豆製品を中心に摂取が推奨
  • よく噛んで、ゆっくり食べることで血糖値の上昇を防ぐ
  • アルコールは適量を守る(男性1日20g、女性10g以下)

全ての生活習慣病で、野菜をしっかり摂って、魚料理がおすすめです。また、ゆっくり噛んで、適切なカロリーを守り、アルコールは適量を守りましょう。

まとめ

高血圧や糖尿病の食事療法では、減塩・血糖コントロール・バランスの取れた食事が大切です。普段の食生活を少しずつ見直し、健康的な食習慣を続けることが、病気の進行を防ぐカギとなります。

食事に関して不安がある場合は、医師や栄養士と相談しながら、自分に合った食事療法を続けることが大切です。

生活習慣を変えることはとても大変なことですが、将来のためにとにかく自分ができそうなところから始めてみるようにしましょう。

当院では2025年4月から、対象の方に対して栄養士の先生からの栄養指導を開始する予定です。希望される方は診察時にお申し付けください。