生活習慣病のある方にとっての意味
「毎年の健診で胸のレントゲンを撮るけど、何のため?」
「高血圧や糖尿病と関係あるの?」
そう感じたことはありませんか?当院でも胸部レントゲンはよく行う検査の1つです。この記事では、胸部レントゲン検査がどんな病気の早期発見につながるのか、また生活習慣病との関係について、検査する意味を含めて詳しくご説明したいと思います。
胸部レントゲンでわかること
胸部レントゲンとは、胸の中(肺や心臓、血管など)の影を写す検査です。X線という目に見えない光を使って、骨や臓器の状態を画像として映し出します。
単純な検査ではありますが、さまざまな異常を見つけることができる検査です。
胸部レントゲンで発見できる主な病気
胸部レントゲンで評価できる主な病気は以下のようなものがあります。
- 肺炎・肺結核・肺がん:肺にできる影や形の異常を発見できます。
- 心臓の拡大(心肥大):心臓のサイズが通常より大きくなる状態を見つけられます。
- 胸水(胸に水がたまる):心不全や肺の病気でみられる変化です。
- 大動脈の異常:大動脈瘤などの重大な疾患の手がかりになることもあります。
これら以外にもさまざまな病気の診断に役立ちます。
また、デメリットについてですが、レントゲンは放射線を使う検査のため多少の被曝はあります。しかいs、健康に影響する量ではなく、量としては一回あたりで東京〜ニューヨークに飛行機に乗って被曝する量より少ないです。そのため、デメリットよりもメリットが大きい検査であると言えます。
なぜ生活習慣病の方にも胸部レントゲンが必要なのか?
ではなぜ特に症状がないような高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病でも検査を行うことがあるんでしょうか。
それは血管や心臓、肺に長期的な影響を及ぼす可能性があるからです。胸部レントゲンは、そのような影響を早く見つけるための一つの手段なのです。
病気ごとに考える、胸部レントゲンの理由
胸部レントゲンは高血圧、糖尿病、脂質異常症の方でも行う場合があります。
高血圧の方の場合
高血圧が続くと、心臓が血液を押し出すために頑張りすぎて、だんだん大きくなる(心肥大)ことがあります。心肥大は放っておくと心不全へと進行することも。
レントゲンでは、心臓の輪郭や大きさから、心臓にかかる負担の兆候をとらえることができます。
また、高血圧によって大動脈(体の中心にある大きな血管)にコブ(大動脈瘤)ができるリスクもあります。これもレントゲンで手がかりがつかめる場合があります。
糖尿病の方の場合
糖尿病では免疫力が低下しやすく、肺炎や結核などの感染症が重症化しやすい傾向があります。レントゲンはこうした感染症の早期発見に役立ちます。
また、糖尿病の合併症として心不全や動脈硬化が進行するケースもあります。レントゲンでは心臓の大きさの変化や肺に水がたまる兆候(うっ血)をとらえることができます。
脂質異常症の方の場合
脂質異常症は、動脈硬化(血管の老化)を進める要因です。その結果、心臓に負担がかかる疾患(虚血性心疾患、心肥大)や大動脈の異常が起きやすくなります。
胸部レントゲンは、これらの「血管と心臓の変化」を間接的に映し出すことで、早期の対応につながる可能性があります。
当然、すべての方で検査を一律におこなうわけではなく、状況や他の病気とあわせての評価となります。ただ、こういった病気の方にとっても定期的に受けておいくことも大切であると考えます。
まとめ
胸部レントゲンは、ただ肺の病気を見つけるだけでなく、生活習慣病によって影響を受けやすい心臓や血管の変化を見つける重要な検査です。
- 高血圧 → 心臓肥大や大動脈の異常をチェック
- 糖尿病 → 感染症や心不全の兆候を早期に察知
- 脂質異常症 → 血管の変化や心臓への負担を見逃さない
生活習慣病は「沈黙の病気」とも呼ばれ、症状が出にくいまま進行することがあります。だからこそ、見た目にはわからない変化を、胸部レントゲンで早期にキャッチすることが大切なのです。
当院では必要に応じて胸部レントゲンの検査を行います。ご不明点があればお気軽におっしゃってください。
引用文献・参考文献
- ACC/AHA Guidelines for the Management of Hypertension, 2017
- 日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイド2024』
- American Thoracic Society. Chest Radiography in Adults.