「足がむずむずしてじっとしていられない」。そんな感覚を経験したことはありませんか?
足むずむず病、正式にはレストレスレッグス症候群(Restless Legs Syndrome:RLS)は、じっとしているとき、特に夜間や就寝時に、足を動かしたくてたまらないような不快な感覚が現れる病気です。多くの方が「虫がはうような感じ」「かきむしりたくなる」と表現します。
いつ起こる?どれくらい続く?
症状は主に夕方から夜にかけて強くなり、睡眠を妨げることが多いです。軽度の場合は気にならない程度で済むこともありますが、重度になると毎晩のように症状が現れ、慢性的な睡眠不足や日中の集中力低下を引き起こすこともあり、症状が辛い病気として知られています。
なぜ足がむずむずするのか?原因と仕組み
足がむずむずする原因は完全には解明されていません。しかし下記のような原因がいわれています。
脳内のドーパミンとの関係
足むずむず病の詳しい原因は完全には解明されていませんが、脳内でのドーパミンという神経伝達物質の働きが関係していると考えられています。ドーパミンは、体の動きを調整する重要な物質で、夜間にその働きが低下することで症状が出やすくなるとされています。
鉄不足や慢性疾患との関連
また、体内の鉄分が不足している場合にも発症しやすいことが知られています。これは鉄分がドーパミンの働きを助ける役割を担っているためです。そのため、以下のような状態にある人は注意が必要です。
- 鉄欠乏性貧血
- 慢性腎臓病
- 妊娠中(特に後期)
- 糖尿病や末梢神経障害がある方
また、遺伝的な要因も関与していると考えられており、家族に同じような症状がある方も少なくありません。
足むずむず病(RLS)の診断方法
足むずむず病の診断方法は主に問診です。
主に問診で診断される
この病気は、血液検査や画像検査で直接診断することが難しく、問診が最も重要な手がかりになります。特に、以下の4つの基準が満たされていれば、RLSが強く疑われます。
- 足を動かしたいという強い欲求がある(むずむず、不快感)
- 安静時に症状が悪化する
- 動かすことで一時的に症状が軽減される
- 夕方〜夜間に症状が強くなる
他の病気との違いを見分ける必要性
一方で、足のしびれやけいれん、こむら返り、あるいは神経の障害による症状との区別が難しいこともあります。
そのため、必要に応じて血液検査(鉄の量など)や専門施設で神経伝導検査、睡眠の質を調べる簡易検査を行うこともあります。
日常生活でできる対策
まずは日常の生活習慣の改善が症状改善への近道です。
規則正しい生活リズム
足むずむず病の症状は不規則な生活や睡眠不足によって悪化する傾向があります。毎日決まった時間に起きて寝る、昼寝を控えるといった基本的なリズムを整えることが大切です。
カフェイン・アルコールとの関係
カフェイン(コーヒー、緑茶、エナジードリンクなど)やアルコールは、一時的に気分を落ち着けるように感じても、実は症状を悪化させることがあります。夜間に向けては控えるようにしましょう。
ストレッチや軽い運動の工夫
日中の適度な運動や、就寝前のストレッチも効果的です。ただし、激しすぎる運動や夕方以降の運動は逆効果になることがあるので注意が必要です。温かいお風呂や足湯で足を温めるのもおすすめです。
症状がつらいときはどうする?治療の選択肢
鉄分補給が有効なことも
血液検査で血清フェリチン値(体内の鉄の貯蔵量)が低下している場合は、鉄剤の内服で症状が改善することがあります。ただし、自己判断で鉄サプリメントを始めるのは避け、必ず医師と相談してください。
そのため、この病気が疑われた方には採血にて鉄不足ではないか?の評価を行います。
お薬による治療(専門医の判断が必要です)
症状が強く、日常生活に支障が出るような場合には、ドーパミンに作用する薬(パーキンソン病の治療薬など)や、てんかんや不安障害に用いられる薬を使うことがあります。これらは副作用や使い方に注意が必要なため、専門医の判断のもとで慎重に使用されます。
当院は専門医ではないため、場合によって紹介させていただきます。
よくあるご質問(FAQ)
Q. この病気は治るのでしょうか?
完全に「治る」病気ではありませんが、生活習慣の見直しや薬物療法によって、症状を軽くすることが可能です。多くの方が、適切な対処で睡眠の質を改善しています。
Q. 子どもにも起こることがありますか?
はい、まれに小児期から症状が見られるケースもあります。特に注意欠陥・多動性障害(ADHD)との関連が指摘されることがあります。
Q. みどりのふきたクリニックでは診てもらえますか?
当院では、大人の方であれば問診と必要に応じた血液検査を通じて、足むずむず病が疑われるか?についての評価は可能です。ひどい場合には専門家への受診がすすめられますが、少し気になるなどはっきりしない場合や通院中に症状が気になる方は、お気軽にご相談ください。
まとめ:足むずむず病に気づいたら、まずは生活習慣の見直しと相談を
足むずむず病(レストレスレッグス症候群)は、夜になると足がむずむずして眠れない、不快でじっとしていられないといった症状を引き起こす、意外と身近な神経の病気です。脳内のドーパミンの働きや鉄分の不足などが関係していると考えられており、貧血や慢性疾患、妊娠中などの背景を持つ方に多く見られます。
この病気は自覚症状が中心で、検査では異常が見つからないことも多いため、見逃されやすいという特徴があります。しかし、日常生活の見直しや適切な治療によって、症状の軽減や睡眠の質の改善が期待できます。
もし「夜に足がむずむずして眠れない」「動かさないと辛い」と感じているなら、それは我慢すべきことではありません。まずは生活リズムを整え、刺激物を避け、ストレッチなどのセルフケアを試してみましょう。それでも症状が続くようであれば、医療機関での相談が重要です。
参考文献・科学的根拠
- Allen RP, Picchietti DL, Garcia-Borreguero D, et al. Restless Legs Syndrome: Diagnostic Criteria, Special Considerations, and Epidemiology. Sleep Med. 2014;15(8):860–873. doi: 10.1016/j.sleep.2014.03.025
- Trenkwalder C, Allen R, Högl B, et al. Restless legs syndrome associated with major diseases: A systematic review and new concept. Neurology. 2016;86(14):1336–1343. doi: 10.1212/WNL.0000000000002542
- Connor JR, Wang XS, Patton SM, et al. Decreased transferrin receptor expression by neuromelanin cells in restless legs syndrome. Neurology. 2004;62(9):1563–1567. doi: 10.1212/01.WNL.0000123255.01987.BC