あなたは高血圧ですよ。血圧はすこし高いですね。といわれたり、血圧の数値は日常的に見かけることもあると思います。
しかし、血圧って「実際にどれくらいの圧力なのか?」と聞かれると、多くの方がイメージしづらいと感じます。
今回は、血圧が実際にどれほどの力なのかを、噴水・水柱・水道ホースの例を使って、できるだけ分かりやすく解説します。
科学的な裏付けとともに、体の中で何が起きているかを理解いただければ、日々の血圧管理の大切さがより実感しやすくなると思います。
血圧の「圧」はどれくらい?
血圧100mmHgは“どれだけの力”なのか?
血圧は 「mmHg(ミリメートル水銀柱)」 という単位で表され、
医学的には 水銀柱の高さでどれだけ押し返す力があるか を示す指標です。
水柱での換算(科学的に最も正確な説明)
- 血圧100mmHg
→ 約1.36mの水柱が押す圧力に相当 - 血圧120mmHg
→ 約1.63m の水柱 - 血圧140mmHg
→ 約1.90m の水柱
根拠(圧力換算)
1mmHg = 13.6mmH₂O(物性データによる標準値)
(参考:Hughes BA. Clin Phys Physiol Meas. 1986. DOI:10.1088/0143-0815/7/1/007)
つまり血圧140mmHgとは、“約2mの高さの水の重さ”が血管を内側から押している力と同じです。
この「水の高さ」は、実感として最もわかりやすい指標のひとつです。
噴水でたとえると?
血圧は「水をどれだけ高く持ち上げられるか」という力にも置き換えられます。
| 収縮期血圧 | 噴水の高さ(イメージ換算) |
|---|---|
| 120mmHg | 約 1.6m の噴水 |
| 140mmHg | 約 1.9m の噴水 |
| 160mmHg | 約 2.2m の噴水 |
| 180mmHg | 約 2.4m の噴水 |
血圧180mmHgは、“2mを超えて水を噴き上げる力”が血管の壁を24時間押し続ける状態です。
実際の血管はゴムホースのように柔らかい組織のため、
このような強い圧が続くと、次第に傷つき、固くなり、動脈硬化が進みます。
ホースの勢いで考えると「衝撃のイメージ」が湧きやすい
水道のホースは、口を狭めるほど水の勢いが強くなります。血管内の圧力もこれに近いイメージです。
血圧別 “ホースの勢い” の感覚
- 120mmHg
→ ホースを普通にひねったときの一定の水流 - 140mmHg
→ ホースの口を少し押さえて「シュッ」と強く出る状態 - 160mmHg
→ さらに口を狭めて勢いよく水が前方に飛ぶ - 180mmHg以上
→ ホースが手の中で暴れだし、制御しづらい強さ
血圧が高くなるほど、血管内の水の勢い(衝撃)が強くなり、
血管の壁をガンガン叩くようになります。
これは、血管の内皮(血管の一番内側の層)を傷つけ、
長期的には動脈硬化を進める主要な要因になります。
血圧が高いと、なぜ体に良くないのか?
血管そのものが傷つく(動脈硬化の進行)
血管は“しなやかなホース”のような構造です。
強い圧力が続くと、
- こすれる
- ひびが入る
- 壁が厚く固くなる
といった変化が起きやすくなります。
これが動脈硬化の入口です。
心臓に負担がかかる
血圧は 心臓が血液を送り出す時の“抵抗” です。
圧が高いほど心臓は強い力で押し出さなければならず、
- 左室肥大
- 心不全
- 不整脈
のリスクが高くなります。
脳・腎臓などの臓器にダメージが蓄積する
脳や腎臓は細い血管が豊富な臓器です。
強い圧が加わると小さな血管ほど壊れやすくなり、
- 脳出血
- 脳梗塞
- 腎機能低下
などのトラブルにつながります。
科学的根拠のある「血圧とリスク」の関係
血圧が20/10mmHg上がるごとに、心血管死はほぼ倍増する
1,000,000人以上のデータを解析した大規模研究では、
115/75mmHg を基準とし、20/10mmHg上昇ごとに
心血管死亡リスクが約2倍になると報告されています。
- Lewington S, et al. Lancet. 2002.
DOI: 10.1016/S0140-6736(02)11911-8
つまり、140mmHgと180mmHgでは、リスクは“桁違い”に異なります。
まとめ
血圧は実は「数字以上の大きな力」です。実際に慢性的にこのような圧がかかることは体へイメージ通り負担になります。
血圧140は、約2mの噴水を作れる力が、
血管の内側を常に押している状態です。
180になると、その圧はさらに強くなり、
脳・心臓・腎臓の血管が壊れやすくなります。
血圧の“数字”の奥には、このような力が隠れています。だからこそ、日々の血圧管理や、家庭血圧の記録がとても大切になります。
血圧が健診などで引っかかった。そのような方は是非一度ご相談ください。
