誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)は、食べ物や唾液が誤って気管に入ってしまうこと(誤嚥)が引き金となって起こる肺炎です。若い人はあまりならずに、体力が衰えてからなる病気で、感染症ですが人にうつるものではあまりないです。この肺炎は特に 高齢の方に多く、治っても再発しやすい という特徴があります。
なぜ誤嚥が起こるのか
年齢を重ねると、食べ物をのどから食道へ送り込む力(嚥下機能)が少しずつ弱くなります。
さらに、咳き込んで異物を外へ出す力(咳反射)も低下します。こうした変化は“自然な老化”の一部であり、誰にでも起こり得ます。
老化による主な変化
- 飲み込みに使う筋肉の衰え
- 唾液の量の減少(口の乾燥が誤嚥を起こしやすくする)
- 咳反射の低下(誤って入ったものを外に出しにくい)
- 寝たきりや活動量の低下による体力低下・姿勢の崩れ
こうした変化はゆっくり進むため、ご本人やご家族が「いつのまにか食べづらくなっていた」と感じることも珍しくありません。
誤嚥性肺炎を理解する第一歩は、「老化が関係しており、決して珍しいことではない」という点です。
誤嚥性肺炎が起こるしくみ
食べ物や飲み物だけでなく、寝ている間に口の中の細菌が唾液と一緒に気管へ入り込む“不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)” も原因となります。
研究では、高齢者の半数以上に不顕性誤嚥がみられるとされ、誤嚥性肺炎が高齢者に多い理由のひとつになっています。
一度治っても再発しやすい理由
誤嚥性肺炎は、肺炎そのものは抗菌薬で改善しても、誤嚥を起こしやすい体の状態はすぐには元に戻らない ため、どうしても再発しやすい病気です。
再発の背景
最初の背景としては、感染症ではなく嚥下機能の衰えによりおこるため、嚥下機能が改善しなければ再発は繰り返します。
- 嚥下機能は薬で劇的に改善するものではない
- 寝たきりやフレイル(虚弱)が進むと誤嚥が増える
- 誤嚥を起こす基礎疾患(脳梗塞後遺症、パーキンソン病、認知症など)がある
高齢者における誤嚥性肺炎は、再発率が30〜50%と高い とする報告もあり、基本的には再発を繰り返す病気です。
誤嚥性肺炎の予後 ― なぜ重要な病気なのか
誤嚥性肺炎は、治療が遅れれば重症化しやすく、入院期間も長くなることがあります。また、肺炎により体力を大きく消耗するため、体力の回復に時間がかかります。
さらにはそれにより嚥下機能が落ちてしまうなど、負のループに入りやすいこと。体力低下により生活の質が低下しやすいため、起こさないことがとても重要です。
誤嚥性肺炎は予後が悪い?
誤嚥性肺炎は予後に関わる病気として知られています。
誤嚥性肺炎で入院した患者さんの 1年以内の死亡率が高い(20〜40%とする報告)という報告もあり、
こうした数字は不安を煽るためのものではなく、「継続的な予防」がとても大切だという医学的背景を示しています。
誤嚥性肺炎をできるだけ減らすために
嚥下機能低下は老化現象でもあるため、誤嚥を完全に防ぐことは難しいですが、毎日の工夫でリスクを減らすことは可能です。
食事のとり方
まずは食事の取り方を工夫することが大切です。
- 姿勢を整えて食べる(背もたれを立て、顎を少し引く)
- ゆっくり食べる
- 飲み込みづらい食材を調整する(ムセやすい場合は柔らかい形状に)
などがあります。特に嚥下機能が悪化してくると、固いものや水分などを誤嚥しやすくなります。そのため、嚥下機能が低下している患者さんは、固いものを細かくしておく、水分にとろみをつけるなどの事前の工夫が大切です。
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口の中を清潔にする(口腔ケア)
口の中の細菌を減らすと、誤嚥したときの肺炎リスクが下がります。
なぜなら、誤嚥の際に肺に入って悪さをするのは口の中に常在している菌であり、その菌量を減らしておくことは、誤嚥をたとえしたとしても、細菌が繁殖するリスクを減らします。
事実、介護施設や在宅介護でも「口腔ケアが誤嚥性肺炎の減少につながる」というエビデンスがあります。
嚥下のリハビリ
嚥下訓練は筋力の維持につながり、誤嚥を起こしにくくすることが期待できます。
誤嚥性肺炎では、リハビリは理学療法士・言語聴覚士と連携しながら行うこともあります。嚥下体操といって、嚥下機能を訓練する方法がネットでも公開されています。
体力づくりも重要
誤嚥性肺炎は、嚥下機能だけでなく 全身の筋力や活動量の低下 とも深く関わります。そのため、できる範囲で体を動かすことは、誤嚥予防にもつながります。
まとめ
誤嚥性肺炎は「老化によって起こりやすくなる病気」であり、決して珍しいものではありません。
治療後も再発のリスクがあるため、日々の予防と、早めの受診 がとても大切です。
みどりのふきたクリニックでは、
- 咳や発熱、食事中のムセが続く
- 飲み込みに不安がある
- ご家族から「前より食べづらそう」と言われる
といった場合にも、お気軽に相談してください。生活の工夫から専門的な評価まで、必要に応じてサポートいたします。
