はじめに:貧血とは何か?
「貧血」と聞くと「血が足りない」と思われるかもしれませんが、正確には「血液中の赤血球やヘモグロビンの量が正常より少ない状態」を指します。
赤血球は体中に酸素を運ぶ役割があるため、貧血になると酸素が十分に行き渡らず、さまざまな不調が現れます。
日本では生理などで血を失い鉄欠乏性貧血になりやすい女性に多く見られます。しかし、さまざまな原因で男性や高齢者でも起こることがあります。自覚しにくいことも多いため、検査で初めて気づく人も少なくありません。
軽い貧血であっても、胃がんや大腸がんなど背景には重大な病気が隠れていることもあるため、詳しく調べることは大切です。
貧血の主な種類
鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)
もっとも多いタイプの貧血です。なんらかの理由で体の鉄分が不足することでヘモグロビンが十分に作られなくなります。
月経、妊娠、授乳、消化管からの出血などで体から鉄が失われて貧血になるケースと、偏った食事や胃炎などが原因で吸収が悪くなり起こる2パターンがあります。
慢性疾患に伴う貧血
また、がんや慢性炎症性疾患(たとえば関節リウマチなど)に伴って起こる貧血です。鉄欠乏性貧血に似ていますが、慢性疾患による貧血では、体の中の蓄えてある鉄(貯蔵鉄)は十分で、炎症などにより体が鉄をうまく使えなることが原因で起こります。
骨髄が赤血球を作る働きが抑えられたりすることで起こります。
巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)
赤血球の大きさが大きくなる貧血です。ビタミンB12や葉酸が不足することで起こる貧血です。胃の病気や過度のアルコール摂取、偏食などが関係します。
胃の手術後の方でもおこりやすいです。
溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)
赤血球が壊れやすくなって起こる貧血です。遺伝的な病気や、自己免疫疾患が原因になることがあります。
貧血の主な症状
貧血の主な症状について解説します。
軽い段階では気づかれにくい
貧血は大量の出血などがない場合には、ゆっくりと進むことがほとんどです。理由は赤血球の寿命が約120日(4ヶ月程度)あるからです。
徐々に進むと貧血に対して体が慣れてしまうため、あまり症状が出ないこともあり、知らず知らずのうちに悪化してしまうということもあります。
貧血のよくある症状
貧血に症状としては下記のような症状が出ることがあります。
- 疲れやすい
- 息切れしやすい
- めまい、ふらつき
- 顔色が青白い
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 頭痛
- 冷えやすい
- 爪が割れやすい
また、頻度は多くありませんが、氷を無性に食べたくなる(氷食症)という症状は貧血で特徴的な症状であり、注意が必要です。
原因の背景に病気が潜んでいることも
単なる栄養不足だけでなく、消化管出血や胃がん、大腸がんなど重大な病気が隠れていることもあります。
そのため、「貧血=鉄剤で治る」と安易に考えるのは危険です。
若い女性は生理により貧血になることは珍しくありませんが、特に中高年で初めて貧血を指摘された場合は、消化器癌の可能性なども考慮して原因を詳しく調べることが重要です。
貧血の診断方法は?
貧血の診断方法について解説します。
血液検査
まずは貧血の評価は血液検査でします。
特に鉄欠乏性貧血が一番多いため、血液の中の鉄の量や、貯蔵鉄という体に蓄えられている鉄の量などをみます。
また、貧血の元いのとなり得る甲状腺の機能やビタミンの量なども評価します。
- ヘモグロビン(Hb)値
- 赤血球数(RBC)
- 血清鉄、フェリチン(体内の鉄の貯蔵量)
- 網赤血球数(赤血球の新しいもの)
- ビタミンB12、葉酸
- 甲状腺機能
貧血に対して必要に応じて行う検査
貧血の原因でたとえば鉄欠乏性貧血の場合には原因を調べる目的で内視鏡の検査が必要です。特に高齢の男性が症状なく貧血が進行した場合は胃がんや大腸がんのなどがないかの検査としてとても大切です。
また、貧血だけではなく、白血球や血小板といった他の成分も低下している場合は骨髄の異常が疑われます。
そういう場合には総合病院で骨髄の検査を行う場合もあります。
貧血の治療法
貧血の治療について簡単にご説明します。
鉄欠乏性貧血の場合
まずは代表的な貧血である鉄欠乏性貧血の場合です。鉄欠乏性貧血の治療は鉄の補充です。具体的には
- 鉄剤の内服(通常2〜3か月)
- 食事の改善(鉄分の多い食品:レバー、赤身肉、小松菜など)
鉄剤の内服では、胃に負担がかかったり、気持ち悪くなって内服ができない方もいます。その場合には注射で補うこともあります。
鉄剤での補充をおこなったばいはすこし時間をあけて再度採血で評価をして過剰な補充にならないように気をつけます。
ビタミンB12・葉酸の不足による貧血
胃の手術後や慢性胃炎など、さまざまな原因でビタミンB12や葉酸が足りなくなる貧血です。これらのビタミン不足による貧血の場合も同様にビタミン剤の内服・注射で治療を行います。
ビタミンの吸収には胃が必要であるため、胃の手術後の方は定期的な補充が必要となる場合もあります。
背景に病気がある場合
背景に原因のある場合にはそれらの治療を優先します。場合によっては輸血を考慮します。
- 原因疾患の治療(例:出血の止血、がんの治療)
日常生活で気をつけること
最後に日常生活で気をつけることについてご説明します。
食事のポイント
軽度の鉄欠乏性貧血の場合は食事を気をつけることで治療や予防が必要です。具体的には
- 動物性食品からの鉄分は吸収がよい(ヘム鉄)
- ビタミンCと一緒にとると吸収率がアップ
- お茶やコーヒーは鉄の吸収を妨げるため食後すぐは避ける
などです。以前鉄欠乏性貧血を言われたことがある女性などは、これらを気をつけるようにしてみましょう。
定期的な検査
また、貧血は知らず知らずのうちにわるくなっている場合があります。症状がない場合でも、健康診断などで定期的に貧血の値をチェックすることが大切です。
まとめ
貧血は「よくある症状」ですが、放っておくと生活の質が低下したり、重い病気のサインを見逃したりすることもあります。「ただの疲れ」と思わず、気になる症状があるときは早めに医療機関で相談しましょう。
参考文献・論文
- Killip S, Bennett JM, Chambers MD. Iron Deficiency Anemia. Am Fam Physician. 2007 Mar 1;75(5):671-8. [PMID: 17375513]
- Camaschella C. Iron-deficiency anemia. N Engl J Med. 2015 May 7;372(19):1832–43. doi:10.1056/NEJMra1401038
- World Health Organization. Haemoglobin concentrations for the diagnosis of anaemia and assessment of severity. 2011.
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