体がむくむと感じたとき、塩分や運動不足、立ちっぱなしなどの生活習慣を疑う方が多いかもしれません。しかし、実は「薬」が原因でむくみが生じることもあります。これは「薬剤性浮腫(やくざいせいふしゅ)」と呼ばれ、様々な薬で起こる可能性があります。
この記事では、薬でむくみが生じる仕組みや原因となる代表的な薬剤、そして対処法についてわかりやすく解説します。
薬によるむくみの原因
実は薬によるむくみの原因となる薬は意外とたくさんあります。
カルシウム拮抗薬(高血圧の治療薬)
血圧の薬であるアムロジピンやニフェジピンなどのカルシウム拮抗薬は実はむくみの原因となります。この薬は血管を広げて血圧を下げる作用がありますが、特に動脈に作用するため、静脈とのバランスが崩れます。その結果、足の血液がうっ滞しやすくなり、血漿成分が外に漏れ出して足がむくむことがあるのです。
- 主に足首やふくらはぎにむくみが出やすい
- 軽度であれば様子を見ることもありますが、ひどい場合は薬の調整が必要です
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
ロキソプロフェンやイブプロフェンといったNSAIDsは、痛みや炎症を抑える薬ですが、腎臓の血流を減少させ、ナトリウムや水分を体に溜め込みやすくする作用があります。そのため、長く使っていると全身のむくみが起きることがあります。また、むくみ以外に腎臓にダメージを与える、胃潰瘍の原因になるなどの副作用があります。
- 特に高齢者や腎臓・心臓に持病のある方では注意が必要
- 長期連用は避け、医師と相談を
ステロイド(副腎皮質ホルモン)
プレドニゾロンなどのステロイド薬は、炎症を抑える強力な薬ですが、副作用としてナトリウムや水分を体に溜め込む作用があります。そのため、むくみ、体重増加、顔の丸み(ムーンフェイス)などが見られることがあります。
- 長期使用の場合は定期的な副作用チェックが必要
- 高血圧や糖尿病の悪化にも注意
ホルモン製剤(女性ホルモンなど)
経口避妊薬やホルモン補充療法で使用されるエストロゲンは、水分を保持する作用があり、むくみの原因になります。また、血栓症のリスクもあるため、既往歴や体質に注意が必要です。
- 足の重だるさや腫れが続く場合は相談を
- 特に静脈瘤や血栓のリスクがある方は注意
糖尿病薬(チアゾリジン系)
ピオグリタゾン(商品名:アクトス)などの薬は、インスリンの効きを良くする薬ですが、腎臓での水分再吸収を促すため、むくみが出やすくなります。心不全のある方には使用が制限されることがあります。
- むくみとともに息苦しさがある場合は要注意
- 他の糖尿病治療薬への切り替えが検討されることも
薬でむくみが出たときの対応
薬でむくみが出たかも?と思った時の対処法について解説します。
1. 服用薬の確認を
むくみが始まった時期と、薬の開始時期に関連がないかを確認することが重要です。新しく追加された薬や増量された薬が原因の可能性があります。
2. 自己判断で中止しない
薬が原因かもしれないと思っても、自分で薬を止めてしまうと症状が悪化したり、元の病気が悪化したりすることがあります。必ず医師に相談してください。
3. 必要に応じて薬の調整
医師が判断し、薬の量を減らしたり、他の薬に変更したりすることで、むくみが改善することがあります。
また、薬剤性に限らずさまざまな原因でむくむことはあります。そのためしっかりと医師の診断を受けるようにしましょう。

まとめ
むくみの原因は多岐にわたりますが、薬も見逃せない要因のひとつです。特に高血圧、糖尿病、炎症、ホルモン治療などで薬を使用している方は、薬剤性浮腫の可能性を常に念頭に置く必要があります。
むくみが続く場合や気になる場合は、まずはかかりつけ医に相談し、適切な対応を受けましょう。
参考文献
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