心房粗動とは?

心房粗動

心房粗動(しんぼうそどう)は、心房(心臓の上の部屋)が異常に速く規則的に拍動する不整脈の一種です。

通常、心房は1分間に60~100回のリズムで動きますが、心房内の電気回路を刺激が旋回してしまうことで生じることで心房が250~350回/分の速さで収縮します。そのため、心臓が効率よく血液を送り出せず、動悸や息切れなどの症状が現れることがあります。

心房粗動は、心房細動(しんぼうさいどう)と似ていますが、心拍が不規則な心房細動とは異なり、規則的な速いリズムを示す(通常150回/分程度)のが特徴です。

また、常に出ているというよりは発作的に早い脈が出るため、心房細動と比較して症状を自覚する方が多いのが特徴です。

一般に心房細動と心房粗動の合併は22〜82%と高頻度で認め、また、おきる原因として不整脈に対する抗不整脈薬の投与もあります。

心房粗動の主な症状

心房粗動の症状はその時の脈の速さや個人差がありますが、主に以下のような症状がみられます。

  • 動悸(ドキドキする感じ)
  • 息切れや疲れやすさ
  • 胸の不快感や痛み
  • めまいやふらつき
  • 意識が遠のくような感じ

心房粗動は心房細動より早い脈となることも多く、症状が起こりやすいです。無症状のこともありますが、心房粗動を放置すると脳梗塞や心不全のリスクが高まるため注意が必要です。


心房粗動の診断方法

心房粗動の診断には、以下の検査が行われます。

  • 心電図(ECG):心臓の電気的な活動を記録し、特徴的な波形を確認。
  • ホルター心電図:24時間の心電図を記録し、発作性の心房粗動を検出。
  • 心エコー(超音波検査):心臓の構造や血流の異常を調べる。
  • 血液検査:甲状腺機能や他の病気が関与していないかを確認。

特に不整脈は常に出ているわけではないため、ホルター心電図という24時間の心電図波形を評価する検査が有用です。当院でも施行は可能です。


心房粗動の治療方法

心房粗動の治療には、薬物療法・カテーテル治療・生活習慣の改善が重要です。

① 薬物療法

  • 抗不整脈薬:不整脈を止める。
  • β遮断薬・カルシウム拮抗薬:心拍数を抑える。
  • 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬):血栓を防ぎ、脳梗塞のリスクを減らす。

急性期と予防で治療薬が異なります。急性期(今出ている不整脈で症状がある場合)は抗不整脈薬の投与で不整脈を止める治療を行います。

予防としては抗不整脈薬やβ遮断薬、カルシウム拮抗薬を使用し、脳梗塞予防として必要な患者さんには血液をサラサラにする薬を使用します。

② カテーテルアブレーション

  • 心房粗動の根本的な治療法として有効。
  • 入院してカテーテル(細い管)を血管から心臓に挿入し、異常な電気信号を発する部分を焼灼(しょうしゃく)する治療法。
  • 成功した場合は再発率が低い

除細動

  • 急性期の対応として行う
  • 心不全、ショックなど血行動体が破綻している場合に緊急的に行う

心房粗動の合併症と注意点

心房粗動を放置すると、以下のような合併症を引き起こす可能性があります。

① 脳梗塞(脳卒中)

心房粗動では、心房細動と同様に心房内に血栓(血のかたまり)ができやすくなり、それが血流に乗って脳の血管を詰まらせることで脳梗塞を引き起こすことがあります。

抗凝固薬を適切に服用することで、脳梗塞のリスクを減らすことができます。

② 心不全

心房粗動が長期間続くと、心臓に負担がかかり、また、心臓のポンプ機能が低下するなどで心不全につながることがあります。

脈が早いということは例えるなら心臓的にはずっとマラソンをしているようなものなので、負担がかかります。

③ その他の合併症

  • 心房粗動により、めまいや失神を起こすことがあるため、転倒などにも注意が必要です。

心房粗動と上手に付き合うために

心房粗動は、適切な治療と管理を行えば、日常生活を問題なく過ごすことができます。

  • 定期的に病院で検査を受ける
  • 医師の指示に従い、薬を正しく服用する
  • 生活習慣を改善し、心臓に負担をかけないようにする
  • 動悸や息切れなどの症状があれば、すぐに医師に相談する

心房粗動は放置すると危険ですが、早期発見・適切な治療を行えばコントロール可能な病気です。

また、アブレーション治療もあります。心配な症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。