「ピロリ菌」と聞くと、なんとなく「胃に悪いもの」というイメージがあるかもしれません。でも、症状もなく日常生活に支障がなければ、治療する必要はないと思っていませんか?
実はピロリ菌は、放っておくと将来、胃潰瘍や胃がんの原因になることがわかっています。この記事では、ピロリ菌をなぜ治療した方がいいのか、その理由をわかりやすくご説明します。胃の健康を守るために、まずは正しい知識を身につけましょう。
ピロリ菌ってそもそもなに?

ピロリ菌(正式にはヘリコバクター・ピロリ菌)は、胃の中にすみつく細菌です。多くの人が子どものころに感染しているといわれており、一度感染すると、通常は自然には体からいなくなりません。また、不思議なことに大人になってから感染することも珍しいとされています。
この菌は胃の中で生きのびる力が強く、ながくピロリ菌がいることで胃の表面に炎症を起こす原因となりさまざまな病気を引き起こします。
ピロリ菌はどれくらいの頻度でいるの?
ピロリ菌は日本の高齢の方の感染率が高いです。これが日本人が胃がんが多い理由でもあります。

このグラフでみてもらうように1970年代は30歳を超えると概ね80%のひとがピロリ菌がいたことがわかります。ただ、水道の発展や治療の確立などで若い人ほど感染率が減っており、2010年代には、10代〜30代では10人に1人程度に減少しています。
つまり年齢が高い人ほど、症状がなくても実はピロリ菌がいる可能性が高いわけです。
ピロリ菌を放置するとどうなるの?
ではピロリ菌を放置するとどうなるのでしょうか?さまざまな疾患のリスクが上がります。
慢性的な胃の炎症
まず確実に起こることとしてはピロリ菌に感染すると、胃の粘膜に慢性的な炎症(慢性胃炎)が起こります。この状態が長く続くと、胃の粘膜が傷んでいきます。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍のリスク
胃や十二指腸の粘膜がただれてしまい、胃潰瘍(かいよう)、十二指腸潰瘍というふかぼれの傷ができることがあります。これにより、腹痛や吐き気、出血などの症状が起こることがあります。
胃がんのリスクが上がる
もっとも重要なのは、ピロリ菌は胃がんの発生リスクを高めるということです。世界保健機関(WHO)も、ピロリ菌を胃がんの原因となる明確な危険因子としています。
実際に、日本ではピロリ菌感染がある人ほど胃がんの発症率が高いことが、数多くの研究で報告されています。
ピロリ菌は症状がなくても治療すべき?
ピロリ菌は感染していても、実は症状が出ないことが多いです。そのためあえて治療をしなくてもいいのでは?というかたもいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、症状がないからといって安心はできません。 胃の中では静かに炎症が進み、将来的に胃がんへとつながるリスクがあるため、「無症状でも治療が大切」です。
治療でピロリ菌は除菌できるの?
はい。現在では、抗菌薬(抗生物質)と胃酸を抑える薬を組み合わせた「除菌治療」が行われています。治療の成功率は高く、約90%以上の方が除菌に成功するとされています。治療については下記で説明してます。

ピロリ菌の治療を受けるにはどうすればいい?
ピロリ菌の治療を受けるには、検査で感染の有無を確認する必要があります。検査には自費と保険で行う方法があります。
医療保険でおこなう場合にはまず胃カメラをうけて、胃カメラで医師がピロリ菌の感染を疑った時に行うことができます。検査方法としては
- 呼気(息)による検査(尿素呼気検査)
- 血液や便を使った検査(便中抗原検査、抗体検査など)
- 胃カメラでの検査(生検、ウレアーゼ法)
などがあります。感染が確認された場合は、患者さんと相談の上、医師の指導のもとで適切な治療を受けることができます。
まとめ:ピロリ菌は早めの発見・治療が大切
- ピロリ菌は胃の中にすみつく細菌で、放置すると胃の病気の原因になります。
- 慢性胃炎、潰瘍、そして胃がんのリスクを高めることが知られています。
- 無症状でも、感染があれば除菌治療を行うことでリスクを減らすことができます。
胃の健康を守るためにも、一度ピロリ菌の検査でピロリ菌がいると言われた方は治療を受けることをお勧めします。
当院でもピロリ菌の治療や胃カメラ、静岡市の胃がん検診なども行っております。気になる症状や異常があれば、お気軽に受診、お問い合わせください。