ピロリ菌の除菌治療について

当院でも上部消化管内視鏡(胃カメラ)が始まったこともあり、すでに多くの患者さんにピロリ菌の除菌治療を行っています。

ピロリ菌の除菌治療自体はそこまで複雑ではありませんが、いくつか注意事項があります。実際の診療にあたってはパンフレットを用いて説明させていただいておりますが、今回はこちらでも内容について説明させていただきます。

ピロリ菌とは?

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に住みつく細菌で、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには胃がんのリスクを高めることが知られています。このため、ピロリ菌に感染している場合は、除菌治療を行うことが推奨されています。

ピロリ菌の除菌治療とは?

ピロリ菌の除菌治療とは、抗生物質と胃酸を抑える薬を一定期間服用することで、ピロリ菌を体内から排除する治療法です。主に一次除菌二次除菌があり、一次除菌で成功しなかった場合は二次除菌を行います。

3次除菌も存在はしますが、自費になります。(1次、2次までは保険治療)

除菌治療の流れ

① 診断

ピロリ菌に感染しているかどうかを調べるために、以下のような検査を行います。

尿素呼気試験(呼気中の成分を調べる)
便中抗原検査(便の中のピロリ菌を検出)
血液・尿検査(ピロリ菌の抗体を調べる)
内視鏡検査(生検)(胃の組織を採取し検査)

ピロリ菌の有無を調べる場合、保険で行う場合には検査前に胃カメラを行う必要があります。

厚生労働省からの通知でも対象者が

① 内視鏡検査又は造影検査において胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者
② 胃MALTリンパ腫の患者
③ 特発性血小板減少性紫斑病の患者
④ 早期胃癌に対する内視鏡的治療後の患者
内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者

とされています。また、除去治療をすることで将来の胃がんリスクも軽減されますが、すでに癌がある方に検査をせずにピロリ菌の除去を行うと、早期胃がんの発見が遅れてしまいます。

ピロリ菌除菌はあくまで予防的な治療であり、その前に治療が必要な病気がないかを見ておくことは大切です。

② 一次除菌

2種類の抗生物質と1種類の胃酸抑制薬(プロトンポンプ阻害薬)を1週間服用します。これにより、約90%(10人に9人)の確率でピロリ菌を除菌できます。

使用される薬剤の例:

  • クラリスロマイシン(抗生物質)
  • アモキシシリン(抗生物質)
  • プロトンポンプ阻害薬(胃酸を抑える薬)かボノプラザン(Pcab)

当院ではより成功率が高いとされているボノプラザンを基本的には使用します。

③ 二次除菌(一次除菌が失敗した場合)

一次除菌が成功しなかった場合、別の抗生物質を用いた二次除菌を行います。二次除菌では、クラリスロマイシンの代わりにメトロニダゾールという抗生物質に変更しし、同様に1週間服用します。

④ 除菌成功の確認

除菌治療終了後、4週間以上経過した後に再検査(当院では6週は空けています)を行い、ピロリ菌が除菌できたかどうかを確認します。

また、除菌の判定は検査精度等の兼ね合いで便中抗原検査尿素呼気検査で行います。また、検査精度のため、除菌の判定を受けていただく2週間前からはPPI(胃薬)を中止していただく必要があります。

対象の方には診察時にしっかり説明させていただきますのでご安心ください。

除菌治療の副作用

除菌治療中は、以下のような副作用が起こることがあります。

下痢や軟便
味覚異常(口の中が苦く感じることがある)
腹痛や吐き気
アレルギー反応(まれ)

皮疹は通常の薬剤を飲むより多い割合で発生します。一部では薬のアレルギーのほか、ピロリ菌に対してのアレルギー反応を反映しているという話もあります。

症状が強い場合は、自己判断で中止せず、必ずすぐに薬剤師か医師に相談してください。

除菌後の注意点

除菌後はピロリ菌の除菌により胃癌の発生率は下がりますが、0になるわけではありません。ピロリ菌が今までいたことのない方と比較するとハイリスクのままです。

そのため、除菌治療を行ったからと安心せずに、定期的な上部消化管内視鏡検査を受けるようにしましょう。

静岡市では50歳以上の方を対象に2年に1度(その年度末に偶数歳の方が対象)の胃がん検診を行っています。当院でも対応できますのでお気軽にお問い合わせください。

まとめ

ピロリ菌は胃の病気と深く関わっているため、感染が確認された場合は除菌治療を受けることで胃がんのリスクを下げることができます。

ピロリ菌の除菌治療は1週間の薬の服用で行います。しっかり飲みきることで成功率が高まります。また、治療後も胃がんのリスクが0になったわけではないため、定期的に胃の検査を受けることが大切です。


【注意】 本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりとなるものではありません。治療については必ず医師に相談し、適切な指導を受けてください。