胃がんは日本人にとって、比較的身近ながんの一つです。近年、死亡数は減少傾向にあるとはいえ、高齢化の影響もあり依然として多くの人が胃がんと診断され、亡くなっています。
2022年の統計では、日本で新たに胃がんと診断された人は約12万人。死亡者数は約4万人にのぼります。
胃がんの恐ろしい点は、初期には症状がほとんど出ないことです。だからこそ、症状が出る前に見つけるための「胃がん検診」が非常に重要になります。
当院では静岡市の行っている胃がん検診を積極的におこなっています。
胃がん検診が重要な理由
早期発見できれば、9割以上が治る
胃がんは、早期に発見できれば90%以上が治るとされています。実際、粘膜の表面にとどまっている段階(早期胃がん)で見つかった場合、内視鏡による切除だけで完治することもあります【2】。
しかし、進行すると手術が必要になったり、周囲の臓器やリンパ節への転移の可能性が高くなったりします。そのため、定期的な検診による早期発見が、生存率に大きな影響を与えます。
症状が出るころには進行していることが多い
胃がんは初期には自覚症状が出にくく、「なんとなく食欲がない」「胃もたれが続く」といった症状が出たときには、すでに進行していることも珍しくありません。検診を受けない限り、自覚症状での発見は遅れる傾向にあります。
検診でわかること
胃がん検診では、胃がんだけでなく、食道がんや胃潰瘍や胃ポリープ、ピロリ菌感染による慢性胃炎なども見つかることがあります。これらの状態も、がんのリスク因子となりうるため、早期の対応が有効です。
胃がん検診の対象は?
対象は50歳以上のその年度の3月31日時点で偶数年齢の方です。(2年に1回)方法は胃カメラでの検診のみ当院では可能です。また、検診の場合は鎮静薬による検査はおこなえません。

検診の費用は?
費用は3,000円です。ただし、70歳以上や下記対象の方は無料となります。
無料対象者
A .令和7年3月31日時点で70歳以上の人(昭和30年3月31日以前生まれの人)
B .後期高齢者医療被保険者証を持っている人
C.生活保護受給世帯の人……生活保護証明書が必要です。
D.市民税非課税世帯の人……市民税課税証明書(原本)が必要です。
また、生検を行った場合は保険診療となるため1,500〜4,000円が追加で発生しますので、ご注意ください。
胃がん検診の注意点
胃がん検診の注意点をご説明します。
鎮静薬が使用できない
静岡市の胃がん検診では鎮静薬は使用できません。その点はご注意ください。(通常の検査では使用して検査を行えます)
生検を行った場合は費用負担がある
胃がん検診は無料〜3,000円となりますが、癌を疑う、ピロリ菌の感染を疑うなど、詳しい検査(生検検査)が必要と判断された方は生検検査を行う場合があります。
その場合はそれ以降は精密検査となり保険診療となるため1,500〜4,000円が追加で発生しますので、ご注意ください。
胃カメラ検査のリスクは存在する
胃カメラ検査にも合併症があり、注意が必要です。報告によりますが、1万件〜2万件程度で、出血や穿孔などの重篤な合併症が起こる可能性があります。
特に血液サラサラにする薬を飲んでいる方は注意が必要です。
胃がん検診の受診の仕方
当院通院中の方は診察時や診察後に当院スタッフへお申し出ください。当院受診中ではない方も対応可能ですので、ご希望の方はお問い合わせください。📞 054-249-0888
胃がんは、検診によって早期に見つけることができれば治療成績の良い病気です。逆に、放置してしまうと命にかかわることもあります。ぜひしっかりと検診をうけることをお勧めします。
参考文献
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html - Makuuchi R, et al. Early detection of gastric cancer and outcomes: A review. Gastric Cancer. 2020; 23(4): 617–628. doi:10.1007/s10120-020-01060-6
- Sugano K. et al. Kyoto global consensus report on Helicobacter pylori gastritis. Gut. 2015; 64(9):1353–1367. doi:10.1136/gutjnl-2015-309252