薬は、私たちの体の中で「必要な場所に効く」ことを期待して使われます。また、飲み方として食事前、食事後など食事と関連付けて飲むことも多いです。
多くの人が食べ物や飲み物によって薬の効き方が変わってしまわないか?を心配されることもあると思います。
この記事では、薬と飲み合わせが悪い代表的な食品や、薬を飲むときに気をつけたいポイントについて、できるだけわかりやすく解説してみたいと思います。
なぜ食事と薬の組み合わせが問題になるのか
食べ物には、ビタミンやミネラル、たんぱく質、脂質などさまざまな成分が含まれています。
それらが薬の「吸収」「分解」「排出」に影響を与えることで、薬の効果が弱まったり、逆に強くなりすぎたりすることがあるのです。
そのため、一緒に食べると吸収が悪くなったり、逆に聞きすぎてしまう薬もあります。
また、薬の種類によっては「空腹時に飲んだ方がよい」「食後でないと胃に負担がかかる」などの条件もあり、飲むタイミングも大切です。
飲み合わせが注意される主な食品と薬の関係
代表的な注意が必要な食事と薬について説明します。
①グレープフルーツと薬
まず、代表的なのはグレープフルーツと薬です。
薬の分解を邪魔して「効きすぎる」リスク
グレープフルーツに含まれるフラノクマリンという成分が、小腸のCYP3A4という酵素を弱めてしまいます。
CYP3A4はさまざまな薬で作用している分解酵素であり、それにより適切に分解されることで薬剤が期待通り作用します。そのためそれらが阻害される結果、次のような薬の血中濃度が上がりすぎることがあります。
- 一部の高血圧の薬(カルシウム拮抗薬):例:ニフェジピン、アムロジピン
- 高脂血症の薬(スタチン系):例:シンバスタチン、アトルバスタチン
- 一部の不整脈の薬
- 一部の抗不安薬・睡眠薬
- 一部の抗菌薬(クラリスロマイシンなど)
数多くの薬剤で影響をうけるため、グレープフルーツがお好きな方で、内服が多い方は、自分が内服している薬剤が影響をうけるか?一度薬剤師さんに相談してみても良いかもしれません。
※オレンジや他の柑橘類にはフラノクマリンが少ないものもありますが、スウィーティーや夏みかんなどは注意が必要です。
②牛乳・乳製品と抗菌薬
つづいては牛乳と抗菌薬です。
カルシウムが薬の吸収を妨げることがある
牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品に含まれるカルシウムは、一部の抗生物質と結びついて吸収を妨げることがあります。
とくに注意が必要なのは以下の抗菌薬は
- テトラサイクリン系(例:ミノサイクリン、ドキシサイクリン)
- ニューキノロン系(例:レボフロキサシン、ノルフロキサシン)
です。これらは、服用の2時間前後は乳製品を避けることが推奨されています。また、これ以外の薬剤についても牛乳のカルシウムや脂肪分などにより吸収に影響を及ぼすことがあるため、薬を牛乳で飲むのは避けるようにしましょう。
③ビタミンKを多く含む食品とワルファリン(抗凝固薬)
最後に血液をさらさらにするワルファリンとビタミンKです。
効果が弱くなって血液が固まりやすくなる
ワルファリンという血をサラサラにする薬を服用中の方は、ビタミンKの摂取に注意が必要です。
ビタミンKは血液を固める作用があり、ワルファリンの効果を弱めてしまいます。
ビタミンKを多く含む食品としては下記のようなものがあります。
- 納豆(とくに要注意)
- 青汁
- ほうれん草、春菊、小松菜、ブロッコリー、海藻類
※完全に禁止ではありませんが、急にたくさん食べたり、食事内容を大きく変えないことが大切です。
食事以外でも薬を飲むときに注意したいこと
食事以外でも注意するポイントはあるのでしょうか?
お茶やジュースで薬を飲むのはOK?
薬は基本的に「水かぬるま湯で飲む」のが原則です。なぜなら薬は中性の水分で内服することを前提として作られており、九州などに影響を与える可能性があるからです。特に以下のような飲み物は、薬の吸収に影響を与える可能性があります。
- 緑茶:鉄剤の吸収を妨げることがあります
- カフェインを含む飲料(コーヒー、エナジードリンクなど):一部の薬と作用が重なる
- ジュース(特にグレープフルーツ):上記のとおり、薬の分解に影響
飲むタイミング(食前・食後・就寝前)は守るべき
また、薬のタイミングについても大切です。薬にはそれぞれ「吸収をよくする」「副作用を減らす」ために決められたタイミングがあります。
- 食前:食べ物が胃に入る前、吸収がよくなる薬や胃薬など
- 食後:食後の胃の中で吸収されやすい薬、副作用が起きにくい薬など
- 就寝前:睡眠薬などは服用後すぐ横になれるように
薬の説明書に書いてある指示は、単なる目安ではなく、重要な情報です。 必ず守るようにしましょう。
まとめ – 薬の効果をしっかり得るために
薬と一緒に食べるもの・飲むものによって効果が変わることがあります。特に注意が必要なのは「グレープフルーツ」「乳製品」「納豆・ビタミンK食品」などです。
また、飲み方(時間帯・水の量・飲み物の種類)にも注意が必要です。
自分に処方されている薬について不安がある場合は、医師や薬剤師に気軽に相談しましょう。
参考文献・ガイドライン
- Ministry of Health, Labour and Welfare (厚生労働省): 医薬品の適正使用に関するガイドライン
- Hanley MJ, Cancalon P, Widmer WW. The Effect of Grapefruit Juice on Drug Disposition. Expert Opin Drug Metab Toxicol. 2011;7(3):267-286. doi:10.1517/17425255.2011.545243