上室性期外収縮とは?

上室性期外収縮

上室性期外収縮(じょうしつせいきがいしゅうしゅく、SVPCまたはPAC)は、心房(心臓の上の部屋)から発生する異常な電気信号により、通常より早いタイミングで心拍が発生する不整脈です。健康な人にもよく見られ、多くの場合、特に治療を必要としませんが、動悸や胸の違和感を感じることがあります。また、検診で指摘される方も多いです。

心室性期外収縮(PVC)と異なり、心室(心臓の下の部屋)ではなく心房で発生するため、特に脈拍100回/分以下は基本的に危険性は低いとされています。


上室性期外収縮の原因

上室性期外収縮は、さまざまな要因によって引き起こされることが知られています。

① 生理的な要因(健康な人にも起こることがある)

  • ストレスや疲労
  • カフェインやアルコールの摂取
  • 喫煙
  • 睡眠不足
  • 激しい運動

健康な人の90%でも少なからず認めます。そのため上室性期外収縮は健康な方でも検診で指摘されることがあります。

② 心疾患や他の病気が関与する場合

しかし、その中で心臓疾患やその他の重篤な疾患の症状として出現している場合もあります。

  • 高血圧
  • 心不全
  • 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
  • 心臓弁膜症
  • 甲状腺機能亢進症
  • COPD(肺気腫)
  • 電解質異常(カリウムやマグネシウムの異常)

様々な疾患が影響して起こすことが知られています。上室性期外収縮の評価ではこれらの疾患が隠れていないかの評価を行います。


上室性期外収縮の主な症状

上室性期外収縮は多くの場合、無症状であり健康診断などで偶然発見されることもあります。しかし、以下のような症状が現れることがあります。

  • 動悸(ドキドキする感じ)
  • 胸の違和感や軽い痛み
  • 脈の乱れを感じる
  • 息切れやめまい(まれ)

このような症状は期外収縮に限らず、心疾患が潜んでいる場合があります。


上室性期外収縮の診断方法

上室性期外収縮を診断するために、以下の検査を行います。

  • 心電図(ECG):短時間の心電図検査で異常が確認されることがあります。
  • ホルター心電図:24時間の心電図記録を行い、発作的に起こる期外収縮を検出します。
  • 心エコー(超音波検査):心臓の構造や機能に異常がないかを確認します。
  • 胸部レントゲン:心臓への負担を評価します。
  • 血液検査:不整脈の原因となっている可能性のある甲状腺機能や電解質異常の有無をチェックします。

心電図検査は、24時間のうちの1分ほどを切り取った波形のみをみるので実際にどれくらい出ているのか?把握が困難です。

期外収縮は1日の中でどれくらい起こっているか?脈拍は100回/分を超えているか?が重要であり、そのためには特にホルター心電図が大切な検査といえます。


上室性期外収縮の治療方法

多くの場合、上室性期外収縮は治療を必要としません。検査にて怖い病気がないことがわかればまずは生活習慣の改善です。しかし、症状が強い場合や基礎疾患がある場合には、以下のような治療を検討します。

① 生活習慣の改善(症状が軽い場合)

  • 禁煙する
  • カフェインやアルコールを控える
  • 十分な睡眠をとる
  • ストレス管理を行う(リラックスする時間を作る)
  • 疲労をとる

まずは生活習慣の改善が大切です。カフェインやアルコールの摂取は影響を及ぼしていることが知られています。

② 薬物療法(症状が強い場合や基礎疾患がある場合)

  • β遮断薬:心拍数を抑えて動悸を軽減します
  • カルシウム拮抗薬:血圧を下げつつ、心臓の興奮を抑える効果があります。
  • 抗不整脈薬(まれに使用):頻繁に発生する場合に処方されることがあります。

基本的には治療は行いませんが、心筋梗塞に合併した場合や、症状やホルター心電図の結果等から治療が必要と判断した場合は上記の薬剤を使用する場合があります。

③ カテーテルアブレーション(ほぼない)

上室性期外収縮が頻繁に発生し、薬でのコントロールが難しい場合に検討します。基本的には行うことは少ないです。

カテーテルアブレーションはカテーテルを使って異常な電気信号を発する部分を焼灼(しょうしゃく)し、根本的に治療する方法です。


上室性期外収縮の合併症と注意点

上室性期外収縮自体は命にかかわる病気ではありませんが、以下の点に注意が必要です。

① 心疾患が隠れていないかの確認

なんともないと思われている期外収縮ですが、基礎疾患がある場合、期外収縮が心不全や狭心症のサインである可能性もあります。そのため基礎疾患がある方は定期的な心電図検査で経過を観察することが大切となります。

② 頻発する場合は医師に相談

1日に何千回も発生する場合や、症状が強い場合は、治療を検討となります。治療適応となるかは医師へ相談しましょう。

③ 生活習慣を見直し、発作を減らす

期外収縮はストレスや体の不調の現れとして出てくることも多いです。そのため、ストレスを避け、健康的な生活を送ることが重要です。


上室性期外収縮と上手に付き合うために

上室性期外収縮は多くの人に見られる不整脈で、基本的には深刻な病気ではありません

  • 定期的な検診を受ける
  • 生活習慣を見直し、発作を減らす
  • 症状が強い場合は、早めに医師に相談する

上室性期外収縮を正しく理解し、適切に対処することで、日常生活に支障なく過ごすことができます。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。