潰瘍性大腸炎とは?

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こり、ただれ(潰瘍)ができる慢性的な炎症性腸疾患(IBD)の一つです。原因ははっきりとは分かっていませんが、免疫の異常や遺伝、環境要因が関与していると考えられています。

疫学調査からは約22万人の患者数と言われ比較的若年に発症し10歳代後半~30代前半が多い疾患です。


潰瘍性大腸炎の主な症状

潰瘍性大腸炎の症状は、炎症の程度や範囲によって異なりますが、主に以下のようなものがあります。

  • 下痢(血便を伴うことも多い)
  • 腹痛や腹部の違和感
  • 発熱や倦怠感
  • 体重減少
  • 貧血

鑑別(見極め)が必要な疾患は細菌性腸炎ですが、それらが数日から1週間程度で改善することに比べ、潰瘍性大腸炎は症状は良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴で、症状がない「寛解期」と症状が悪化する「再燃期」を行ったり来たりします。

長期間症状に悩まされるのが特徴です。


潰瘍性大腸炎の原因

潰瘍性大腸炎の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関係していると考えられています。

免疫の異常(腸の免疫システムが過剰に反応して炎症を引き起こす)

遺伝的要因(家族内に患者がいる場合、発症リスクが高くなる)

環境要因(食生活やストレス、腸内細菌の変化が影響する可能性)

たとえばタバコを喫煙していることは潰瘍性大腸炎に防御的に働き、喫煙者が禁煙すると潰瘍性大腸炎の病状が悪くなるケースがあったり、虫垂炎手術を受けると発症率が下がるなどが知られています。


潰瘍性大腸炎の診断方法

潰瘍性大腸炎は、以下の方法で診断されます。

  • 大腸内視鏡検査(炎症や潰瘍の有無を確認)
  • 生検(組織検査)(大腸の粘膜を採取し、顕微鏡で詳しく調べる)
  • 血液検査(炎症の程度や貧血の有無をチェック)
  • 便検査(感染症との鑑別のため)

潰瘍性大腸炎の診断には問診と大腸内視鏡が重要です。内視鏡では潰瘍性大腸炎に特徴的な大腸の所見を認め、生検検査で病理学的な評価をして診断を行います。

また、どれくらい重症か?(重症度分類)には排便回数、血便の有無のほか、貧血や採血での数値も用いられるため、採血検査も必要となります。

大腸カメラは診断のほか治療効果の評価や癌のスクリーニングなど診断後も定期的に行う必要があります。


潰瘍性大腸炎の治療方法

潰瘍性大腸炎の治療には、しっかりとした薬物療法と生活習慣の改善が重要です。

特にできるだけすみやかに寛解(病状が治まって落ち着いていること)という状態にもって(寛解導入)いき、維持する(寛解維持)ことが大切です。症状の改善も重要ですが、長期間予後の改善のため最終的には内視鏡的にな改善Treat to Targetを目標とします。

薬物療法

  • 5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤(炎症を抑える)
  • 内服または注腸ステロイド(症状が悪化した際に使用)
  • 免疫調整薬(免疫の異常な働きを抑える)
  • 生物学的製剤(抗TNF-α抗体などの新しい治療薬)

主な薬物治療は上記のとおりです。キードラック(重要な薬)は5-ASAといわれる潰瘍性大腸炎の治療薬です。潰瘍性大腸炎の部位に応じて、さまざまな内服薬や座薬の中から選択して使用します。

それでも寛解導入できない場合はステロイドの使用や生物学的製剤を検討します。

生活習慣の改善

  • バランスの良い食事を心がける(刺激の強い食べ物を避ける)
  • ストレスを軽減する(リラックスできる時間を持つ)
  • 適度な運動を取り入れる(体力維持のため)
  • 症状が良くなっても定期的に受診し、医師と相談する

生活習慣の改善も重要です。薬だけに頼らず生活習慣の改善も目指しましょう。

また、内服、点滴治療で改善しない重症の方や癌を合併した方などでは手術が必要となる方もいます。特に

潰瘍性大腸炎の治療中の検査

潰瘍性大腸炎の診断となった場合は定期的な診察、採血検査、大腸カメラなどでの活動性の評価が大切です。

また、便中カルプロテクチンなどのバイオマーカーも活用します。

潰瘍性大腸炎は罹患期間が長くなると、大腸癌リスクが高いことが知られています。そのためガイドラインでも罹患8年から、大腸内視鏡により癌のサーベーランスを行うことが推奨されています。それ未満でも発症率はため定期的な大腸カメラは重要です。


潰瘍性大腸炎と上手に付き合うために

潰瘍性大腸炎は完治が難しい病気ですが、適切な治療を行うことで症状をコントロールし、日常生活を快適に過ごすことができます。

  • 症状が落ち着いている時期も治療を続ける
  • 自己判断で薬をやめない
  • 食事や生活習慣を見直す
  • 症状が悪化したら早めに医師に相談する
  • 定期的な大腸カメラを受ける

潰瘍性大腸炎の症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。