胃潰瘍、十二指腸潰瘍
胃潰瘍(いかいよう)、十二指腸潰瘍とは、胃(十二指腸)の粘膜が傷つき、ふかぼれができてしまう病気です。
さまざまな原因により、弱くなった粘膜が胃酸によって侵され、炎症や潰瘍(びらん)が発生します。それがひどくなると、出血や穿孔(胃に穴が開く)といった重篤な症状を引き起こすこともあります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍は、悪化すると出血や穿孔(穴が開くこと)という重大な症状が出現したり、適切に対応しないと再発を繰り返しやすいため、注意が必要な病気です。
そんな胃潰瘍、十二指腸潰瘍について解説します。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因はさまざまあります。また、1つの要因だけではなく複数のリスクがあるとよりリスクが高まっていくことも知られています。
① ヘリコバクター・ピロリ菌感染
原因として一番大きいのはピロリ菌感染です。ピロリ菌は胃の粘膜に生息し、胃酸の影響を受けにくい環境を作り出します。胃潰瘍、十二指腸潰瘍の方の80%以上の方はピロリ菌がいるという研究もあります。また、胃潰瘍十二指腸潰瘍をおこして、ピロリ菌がいる場合は、除菌治療をしないと再発率も高いです。
そのため、ピロリ感染がある場合には胃潰瘍治療後に除菌の治療を受けることが重要です。
② 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用
ピロリ菌以外では、NSIADsとよばれる(アスピリン、ロキソニンなど)の長期使用が原因として知られています。ロキソニンの長期使用により、胃潰瘍、十二指腸潰瘍を起こす方もいらっしゃいます。
また、ピロリ感染と同時に使用するとリスクがさらに上がることが知られています。
③ 過剰な胃酸分泌
ストレスや暴飲暴食、刺激の強い食事(辛いもの、アルコール、カフェイン)によって胃酸の分泌が増え、胃粘膜が傷つきやすくなります。特に若い方に多いです。
④ 様々な薬剤
NSAIDs以外でも骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネートや、ステロイド治療などは胃潰瘍の原因となることが知られています。
これらについても、他のリスクと組み合わさると発症リスクが上がるため注意が必要です。
胃潰瘍の主な症状は?
胃潰瘍の症状は個人差がありますが、主に以下のようなものが見られます。
- みぞおちの痛みや灼熱感(食後や空腹時に悪化することが多い)
- 胃の不快感や膨満感
- 吐き気や嘔吐
- 食欲不振や体重減少
- 吐血や黒色便(タール便)(出血がある場合)
- 貧血によるふらつき
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の症状としては、潰瘍による痛みや食思不振や出血による貧血があります。
ひどくなると穿孔と言って穴が開くことによりお腹に激しい痛みが生じるケースもあります。また胃からの出血では、タール便という黒い便がでることがあるため、便が黒くお腹の調子が悪い方は検査も検討する必要があります。
胃潰瘍の合併症と注意点
胃潰瘍は食欲不振や軽い腹痛ではじまることが多いですが、それらを放置し悪化すると以下のような合併症が起こる可能性があります。
- 胃出血(吐血や黒色便の原因になる)
- 穿孔(胃に穴が開き、腹膜炎を引き起こす)
これらの症状は重篤で場合によっては入院も考慮しないといけないため、症状が悪化したり、痛みが強い場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
胃潰瘍の診断方法
以下の方法で胃潰瘍、十二指腸潰瘍を診断します。
- 内視鏡検査(胃カメラ):胃の粘膜の状態を直接観察し、潰瘍の有無を確認します。
- 腹部CT:胃潰瘍などを描出します。
- X線検査(造影剤を使用):昔は潰瘍の状態を確認するために行われることがありました。
現在はほとんど胃カメラ検査により診断します。また、胃潰瘍は良性の潰瘍および悪性の潰瘍(胃癌など)があるため、内視鏡で疑われた場合には生検検査を行い病理診断を行う場合が多いです。
また、活動性出血(今も出ている、出そうな状態)を認めた場合には内視鏡で止血処置を行うこともあります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療
治療には、薬物療法が重要で、再発予防にはピロリ菌がいる場合は除菌治療、また生活習慣の改善が重要です。
薬物療法
- プロトンポンプ阻害薬(PPI):胃酸の分泌を抑え、潰瘍の治癒を促進を行います。
- H2ブロッカー:胃酸の分泌を軽減。
- 胃粘膜保護薬:胃の粘膜を保護し、修復を助ける。
- 抗生物質(ピロリ菌除菌療法):ピロリ菌が原因の場合、抗生物質を用いて除菌します。
一番の治療はPPI(Pcab)と言われる治療薬です。胃潰瘍、十二指腸潰瘍が改善するまで継続する必要があります。症状がひどい場合や、出血などを伴う場合は入院の上点滴での治療を行う場合もあります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍ができた方でピロリ菌がいる場合は除菌治療をしないと高頻度で再発をすることが知られています。胃潰瘍治癒後にピロリ菌除菌治療を受けるようにしましょう。
内視鏡治療、手術治療
出血がひどい場合は内視鏡治療や手術加療が行われます。また、穿孔と言って穴が空いている場合には緊急手術が行われるケースもあります。
再発予防にはピロリ菌の除菌はもちろん、生活習慣の改善も重要です。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍についてまとめ
胃潰瘍、十二指腸潰瘍は胃(十二指腸)の粘膜が傷つき、ふかぼれができてしまう病気です。
悪化すると出血や穿孔(穴が開くこと)という重大な症状が出現したり、適切に対応しないと再発を繰り返しやすいため、注意が必要です。
よくある胃潰瘍(十二指腸潰瘍)イメージとしては、お腹の不調(心窩部の痛み)と黒い便が出ている方です。このような症状がある場合は、内視鏡検査のできる病院への受診をおすすめします。
胃潰瘍は早期に治療を開始すれば回復が期待できる病気です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
- 胃に優しい食事を心がける
- 規則正しい生活を送り、ストレスをためない
- 医師の指示に従い、症状が改善しても適切に薬を服用する
- ピロリ菌の除菌治療を受ける(感染がある場合)
- 症状が続く場合は、早めに医師に相談する