熱い時期の脱水症状と熱中症対策― 高齢者の方の注意点、上手に水分補給するには?

はじめに:なぜ夏の水分補給が大切なのか?

昨今は暑い日が長くなってきています。6月にもなると夏と同じような暑さの日も珍しくありません。そして夏の暑さが厳しくなるにつれて、注意しなければならないこととしては脱水症状や熱中症のリスクです。

特に高齢者では、体内の水分バランスを保つ力が低下しているため、若い人以上に注意が必要です。喉の渇きを感じにくくなる、腎機能が低下している、持病で利尿剤を使用しているなど、さまざまな要因が脱水を引き起こしやすくしているのです。今回は夏に気をつけるべきの脱水についてお話しします。

脱水症状とは?その仕組みと体への影響

まずは脱水とはなぜおこるのでしょうか。

水分と電解質のバランスが崩れることが原因

人の体の約60%は水分でできています。たとえば下痢になって水分を失ったり、夏になると体の体温を汗をかくことで調節し、その過程で水分を失います。

失った水分をしっかり補給を行わずに汗をかき続けると、徐々に体の中の水分が不足してしまいます。

また、その際に水分と一緒に「ナトリウム」や「カリウム」などの電解質も失われます。これも補給されないままでいると、体の機能が正常に働かなくなってしまいます。

脱水が進むと起きること

では脱水が進行するとどんな症状がでるのでしょうか。具体的には

  • 倦怠感、頭痛、めまい
  • 集中力の低下
  • 筋肉のけいれん(こむら返り)
  • 重症化すると意識障害、腎不全を引き起こすことも

などです。ちょっとしただるさが頭痛が実は脱水症の症状であったということもあります。また、高齢の方は軽いときに症状を自覚しずらく知らず知らずのうちにひどくなることもあります。

熱中症とは?脱水との違いとつながり

また、熱中症という症状も聞いたことがあると思います。これは熱さによる体温調節の破綻です。脱水症は下痢などで水分を失ったときもおこります。

熱中症は体温調整の破綻によって起きる

熱中症とは、高温多湿の環境下で体の熱をうまく外に出せなくなり、体温が異常に上昇してしまう状態です。脱水はその前段階として起こることが多く、早めの対応が重要です。

高齢者に多い「非典型的な熱中症」

高齢者の場合、必ずしも「汗だくでぐったりする」といった典型的な症状が現れないこともあります。たとえば、

  • なんとなく元気がない
  • 食欲が落ちる
  • 軽い頭痛やふらつき

といった一見些細な変化が、実は熱中症の始まりだったということも少なくありません。そのため、夏には症状がなくても十分に注意することが大切です。

高齢者の方の注意すべきポイント

喉の渇きを感じにくいことに注意

加齢とともに、喉の渇きを感じるセンサーが鈍くなります。そのため、本人が「水は飲みたくない」と感じていても、実際には水分が足りていないことが多々あります。そのため、のどが渇いていなくても少しずつは飲むようにしましょう。

持病と薬の影響

心不全、高血圧、腎臓病などで利尿薬を使っていると、水分が体から排出されやすくなります。また、糖尿病の方では、脱水によって血糖値が急上昇するリスクもあります。

体調不良の際に飲んでいるお薬をどのようにするか(中止するのか、飲み続けるのか?)については事前に医師に確認しておくようにしましょう。

上手な水分補給の方法とは?

ではどのように水分をとることが大切なのでしょうか。

1日1.2〜1.5リットルを目安に

まず水分はこまめに、1日を通して少しずつ摂ることが大切です。一度にたくさん飲むより、コップ1杯(150〜200ml)を数時間おきに飲む方が体に負担がかかりません。

水だけでなく、塩分・糖分も適度に

大量に汗をかいた後は、水だけではなく、ナトリウムやブドウ糖を含む経口補水液(ORS)や、スポーツドリンクの活用も有効です。ただし糖分が多い製品もあるため、糖尿病の方は医師に相談して選びましょう

特に甘いジュースなどで水分補給を行うと血糖値が異常に上昇してしまうペットボトル症候群という病気もあり、注意が必要です。基本的にはお茶や水をメインにするようにしましょう。

飲み物の温度や種類にも工夫を

冷たすぎる水は胃腸に負担がかかることもあります。常温や少し冷たい程度の飲み物を選び、好みに合わせて麦茶や薄い味のスープなども利用しましょう。

日常生活の中でできる予防策

  • 朝起きたらまずコップ1杯の水を飲む
  • 食事のたびに水分を取る習慣を
  • 屋外に出るときは帽子や日傘を使い、なるべく日陰を歩く
  • エアコンの使用をためらわない(設定温度は28℃前後が目安)

とくにエアコンは熱いと自分が感じていなくても体が感じている場合があります。しっかりと使うようにしましょう。

こんな時はすぐに医療機関へ

次のような症状があれば、我慢せず早めに受診を検討してください。

  • 意識がもうろうとしている
  • 水を飲んでも吐いてしまう
  • 尿の量が極端に減る、色が濃い
  • 筋肉のけいれんが続く

これらの症状は重症の脱水になっている可能性があります。自宅で我慢せずに医療機関に相談するようにしましょう。

おわりに:日々の積み重ねが命を守る

夏の暑さは避けられませんが、適切な水分補給と生活環境の工夫で、脱水症や熱中症の多くは防ぐことができます。特に高齢者の方は、ご自身では気づきにくい体調変化に周囲が気を配ることも重要です。

当院では、夏場の健康管理に関する相談も受け付けております。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

参考文献

  1. Kenefick RW, Cheuvront SN. Hydration for recreational sport and physical activity. Nutr Rev. 2012 Sep;70 Suppl 2:S137-42. doi:10.1111/j.1753-4887.2012.00520.x
  2. Sawka MN, Montain SJ. Fluid and electrolyte supplementation for exercise heat stress. Am J Clin Nutr. 2000 Aug;72(2 Suppl):564S-572S. doi:10.1093/ajcn/72.2.564S
  3. 日本救急医学会. 熱中症診療ガイドライン2022.

みどりのふきたクリニック

診療科目循環器内科、消化器内科、内科、訪問診療
場所静岡市葵区大岩町4-23 
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