逆流性食道炎
逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)は、胃酸が食道へ逆流し、食道の粘膜に炎症を引き起こす病気です。胸焼けや呑酸(酸っぱいものが上がってくる感じ)などの症状が特徴で、日本でも近年増えている疾患のひとつです。
通常、胃と食道の間には下部食道括約筋という筋肉があり、胃酸の逆流を防いでいます。しかし、何らかの原因でこの機能が低下すると胃酸が食道に逆流し、食道粘膜を刺激して炎症を引き起こします。
逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎は、以下の要因によって引き起こされることが多いです。
① 下部食道括約筋の緩み
- 加齢による筋力の低下
- 食事の影響(脂肪分の多い食事、アルコールなど)
- 肥満(腹圧の上昇による影響)
② 胃酸の過剰分泌
- ストレスや食生活の乱れ
- 刺激の強い食べ物(辛いもの、酸っぱいもの、炭酸飲料)
- 過食や夜遅い時間の食事
③ 胃の内容物が逆流しやすくなる状態
- 食道裂孔ヘルニア(胃の一部が横隔膜を通って胸部に移動する状態)
- 長時間の前かがみ姿勢や横になる習慣
- 便秘による腹圧の上昇
逆流性食道炎の主な症状
逆流性食道炎では、以下のような症状が現れます。
- 胸焼け(みぞおちから喉にかけての焼けるような感覚)
- 呑酸(酸っぱい液体や苦い液体が口に上がってくる)
- 喉の違和感(イガイガする、咳が出る)
- 慢性的な咳や声のかすれ
- 食べ物の飲み込みにくさ
- 吐血
などさまざまな症状が出ることがあります。特に咳など一見食道には関係なさそうな症状のみがある場合もあります。
逆流性食道炎の診断方法
医師は以下の検査を用いて逆流性食道炎を診断します。
- 問診(症状の確認)
- 内視鏡検査(胃カメラ)(食道の炎症やびらんの有無をチェック)
です。基本的には問診により逆流性食道炎が疑わしいかはわかります。また、診断には上部消化管内視鏡(胃カメラ)を行い、評価します。胃カメラにより逆流性食道炎はGrade分けされ、軽傷順にM、A、B、C、Dがあります。
逆流性食道炎の治療方法
治療には薬物療法と生活習慣の改善が重要です。
薬物療法
- プロトンポンプ阻害薬(PPI):胃酸の分泌を抑え、症状を改善。
- H2ブロッカー:胃酸の分泌を軽減。
- 制酸薬:胃酸を中和し、一時的に症状を和らげる。
- 消化管運動改善薬:胃の排出を促進し、逆流を防ぐ。
症状がひどい場合には、PPIやH2ブロッカーという胃酸を弱める治療薬を使い治療を行います。吐血やひどい嘔吐など症状が重篤な場合には入院して点滴での治療を行う場合もあります。
生活習慣の改善
- 食後すぐに横にならない(食後2~3時間は座るか立って過ごす)
- 暴飲暴食を避ける(特に脂っこい食事や刺激物は控える)
- 寝るときに上半身を少し高くする(枕を高めにするなど)
- 適度な運動をする(肥満を防ぐためにウォーキングなど)
- 禁煙・節酒を心がける(特にアルコールは逆流を促す)
また、逆流性食道炎には生活習慣が影響しているケースがあります。胃酸が逆流しやすくなる行動を避けることで、症状の増悪、再燃を防ぐこともできます。
逆流性食道炎の合併症と注意点
適切な治療を行わないと、以下のような合併症が起こる可能性があります。
- 食道狭窄(炎症が慢性化し、食道が狭くなる)
- バレット食道(長期間の胃酸刺激により、食道粘膜が変化し、がんのリスクが上がる)
特にひどい場合には食道の拡張治療を必要とする場合は、吐血などで入院加療が必要となる場合があります。症状が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
逆流性食道炎は、生活習慣の改善と適切な治療でコントロール可能な病気です。
- 食生活を見直し、胃に優しい食事を心がける
- 寝る前の食事や飲酒を避ける
- 適度な運動を取り入れ、健康的な体重を維持する
- 症状が続く場合は、自己判断せず医師に相談する
気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。