はじめに
健康診断で行われる便潜血検査(大腸がん検診)は、目に見えない便に混じった少量の血液を見つける検査です。目的としては大腸がんを早期に発見するために行われます。
なぜなら大腸がんは早期には症状が出にくく、気づかないうちに進行することも多いため、症状が出る前に発見を目指します。そんな大腸がん検診の便潜血ですがめんどうでも毎年の検査がとても大切です。
ここでは、なぜ毎年受ける必要があるのか、その医学的根拠をわかりやすく解説します。
毎年の検査が重要な理由
大規模研究で明らかになった「死亡率の減少」
便潜血検査は、世界中で大腸がんの死亡率を下げる効果が確認されています。台湾で約500万人を対象としたコホート研究では、2年ごとに便潜血をおこなった人は、おこなっていない人より、62%の大腸癌死亡率の減少を認めたことが証明されました。(Chiu HM, et al. Cancer 2015;121:3221-9 PMID:25995082)
つまり、便潜血検査は大腸がんを早期に見つけることができるため、治療成績が良くなり、大腸がんで命にかかわりにくくなるということです。
大腸がんやポリープは1年で変化することがある
大腸がんは、もともと「ポリープ(腺腫)」という小さなできものが年月をかけて大きくなることで発生すると考えられています。
しかし、ポリープは成長の速度が一定ではなく、また、便潜血で全てを拾い上げれる検査ではありません。そのため昨年は問題なしでも、今年陽性で検査をしたら癌があるということがあり得ます。
そのため、単発の検査では安心しきれず、毎年の積み重ねが大切です。
便潜血検査は“そのときに出血していなければ陰性”になる
便潜血検査は、出血したタイミングを捉える検査です。大腸がんやポリープは、常に血が出るわけではありません。
例えば…
- 昨年は出血がなかった → 陰性
- 今年は少し出血した → 陽性
ということが起こり得ます。したがって、毎年検査することで出血のタイミングを逃さず、早期発見につながります
この特性については以下の研究でも指摘されています。
陽性でもがんとは限らないが、放置は危険です
陽性であれば必ずしも癌なのか?というと実は違います。それについては下の記事で説明しました。

陽性のうち、大腸がんが見つかる割合は約3〜5%
便潜血陽性=がん、ではありません。痔や一時的な腸の炎症でも陽性になります。
しかし、以下の論文では、陽性者の約3〜5%に大腸がんが見つかると報告されています。これは一見すると低く感じますが、国立がん研究センターのデータによると、人口あたりの罹患率は123.2 例(男性141.4 例、女性105.9 例)(人口10万対)のため、確率に直すと0.123%です。
そう考えると便潜血陽性となった人は20倍以上リスクが高いことになります。つまり、検査をしてないことを確認しなければ安心とは言えません。
また、陽性から10ヶ月以降の大腸カメラでは、大腸がんや進行がんのリスクが上昇することも研究で示されており、陽性となった場合はできるだけはやめに精密検査を受けることをおすすめします。
陽性で大腸カメラを受けると、早期がんの発見率が高い
便潜血検査で異常が見つかった場合は、大腸内視鏡(カメラ)で確認することが標準的な流れです。
大腸カメラは、ポリープをその場で切除できるという点で、がんの予防にもつながります。
この「検診 → 発見 → ポリープ切除 → 予防」という流れは、世界的にも効果が高いと評価されています。
40歳以降は特に毎年が推奨される
年齢とともにリスクは上昇し大腸がんは40歳頃から増え始め、50歳以降で一気に増加します。日本でも、大腸がん検診(便潜血)は40歳以上の方に推奨されています。
また、大腸カメラに比べて便潜血検査は、
- 自宅でできる
- 食事制限なし(免疫法)
- 2日分の便を取るだけ
という、患者さんの負担の少ない検査です。そのため、毎年の習慣として継続しやすいというメリットがあり、毎年行うことがいいと考えます。
静岡市にお住まいの方へ
静岡市では、大腸がん検診(便潜血検査)を実施しており、対象年齢や費用補助があります。
最新情報は年度により変更されるため、検診ページをご確認ください。
当院(みどりのふきたクリニック)でも大腸がん検診の受診が可能です。
まとめ
便潜血検査は“毎年受けるからこそ”意味がある
- 大腸がんは早期はほとんど症状が出ない
- 便潜血検査は死亡率を下げることがわかっている
- 出血の有無は年ごとに変わるため、毎年受ける意味がある
- 40歳以降は特に毎年の検査が推奨される
「去年は大丈夫だったから今年はいいや」と思わず、毎年の習慣として検査を受けることが、将来の健康を守る大切なポイントです。
出典や引用
- 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
- Chiu HM, et al. Cancer 2015;121:3221-9 PMID:25995082
