危険な胸痛、安全な胸痛

医師会健診センターMEDIOの作成したラサンテに投稿した文章の第1弾です。

突然発症し命を危険にさらす病気があります。胸痛を主訴とする急性心筋梗塞や大動脈解離、大動脈瘤破裂です。働き盛りの男性に発症し、命が奪わなくても、入院を余儀なくされ仕事を休まなければなりません。急性心筋梗塞はお笑い芸人の前田健さんやサッカー選手の松田直樹選手の命を奪ったことで有名です。石原裕次郎さんは大動脈瘤破裂で亡くなっています。しかし、たまに胸のどこかが痛くなることは誰でもあります。この痛みは危険なのか、安全なのか不安になることはありませんか。

胸痛と言っても色々な痛みがあります。鋭い痛みだったり、鈍く感じたり、数秒だったり30分以上続いたり、その性状により診断が可能です。基本的にチクチク、ズキズキ、ピリピリなどカタカナで表現できる痛みは、経痛の可能性が強いので安全な痛みとなります。代表的な神経痛は歯の痛みです。臓器の痛みは鈍い痛みです。鈍いというのは弱いという意味ではありせん。場所がはっきりしない広範囲な痛みです。ただしヒリヒリだけは狭心症の可能性があります。

狭心症は心筋梗塞の前兆として重要で、この段階で診断し病院で治療をすれば1週間で社会復帰できます。狭心症は顎と心窩部、左右の乳首のラインで作る長方形の範囲に、手のひらサイズの痛みが3分間持続します。3分がポイントで1分以内ではなく15分は持続しません。午前中に多く午後は少ないという特徴もあります。翌日に同様な条件で繰り返すのも特徴です。心筋梗塞はこの痛みが30以上続き、額に冷汗が出ます。冷汗が心筋梗塞の特徴で、ほぼ100%出ます。冷汗は重症を意味しますので救急車を呼びましょう。

狭心症と似ている疾患に逆流性食道炎があります。呑酸と表現される胸やけが典型的ですが、胸痛や喉のつまりとも表現されます。食道は心臓の後面にあり、痛みは同じ部位に出ます。持続時間が長いのが特徴で、鑑別は水を飲んで痛みが軽くなることです。帯状疱疹という水泡と痛みを特徴とする疾患もあります。神経痛ですのでチクチク系です。肋骨骨折では圧痛があり、体の捻転や咳で痛みが増強します。

大動脈解離の痛みはかなり強いものです。動脈の中膜と外膜の間が裂けて血液が流入します。痛みは前方から始まり背部に移動して下に降りていくのが特徴で、数時間持続します。

では心筋梗塞や大動脈解離は誰でもなる病気なのでしょか。実は遺伝的な要因が関係します。一般的に生活習慣病といわれる疾患はほぼ遺伝病です。父親や祖父の疾患を調べ、その疾患を注意しましょう。

狭心症、心筋梗塞はコレステロールを、大動脈解離は血圧に注意をします。LDLコレステロールは動脈硬化に関係するため悪玉と呼ばれていますが、必ず動脈硬化を引き起こすとは限りません。頸動脈エコー検査を受けて、動脈にコレステロールが溜まっているか調べてみる事が重要です。コレステロール塊であるプラークが認められたらあきらめて内服をしましょう。

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