カンピロバクター腸炎とは
カンピロバクター腸炎は、カンピロバクター菌という細菌によって引き起こされる腸の感染症です。日本では、食中毒の主要な原因のひとつとして知られており、特に生または加熱不十分な鶏肉などが感染源となることが多いです。
カンピロバクター感染の主な原因
カンピロバクターは、カンピロバクター属に分類される細菌で、特に**カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)とカンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)**が食中毒の原因となります。
1. 汚染された食品の摂取
カンピロバクターは動物(特に鳥類)の腸内に常在する細菌であり、以下のような食品を介して感染することが多いです。
✅ 鶏肉の生食や鶏肉の加熱不足
カンピロバクターは鶏の腸内に高確率で存在しているため、生の鶏肉は加熱が不十分な鶏肉(レアな焼き鳥・鶏刺し・たたきなど)を食べると感染のリスクが高まります。
飲食店で提供されているケースもありますが、鶏肉をレアな状態で食べることはリスクが高い行動であることは知っておく必要があります。
✅ 汚染された水や乳製品
井戸水や十分に殺菌処理されていない牛乳にもカンピロバクターが含まれていることがあります。特に非加熱の生乳を摂取すると感染リスクが高まります。
2. 二次感染(調理の影響)
調理時の不適切な取り扱いにより、ほかの食品に細菌が移ることでも感染します。
✅ まな板・包丁・調理器具の使いまわし
生の鶏肉を切った後に、使用したまな板や包丁などの調理器具を十分に洗浄せずに他の食材に使用することにも注意が必要です。鶏肉はしっかり火を通したとしても、調理中に付着したカンピロバクターが他の食材を介して感染の原因になります。
✅ 手指を介した汚染
生肉を触った後に手を洗わずに調理や食事をすると、カンピロバクターが口に入る可能性があります。
3. 動物との接触
✅ ペット(犬・猫・鳥など)からの感染
カンピロバクターは一部のペットの腸内にも存在するため、ペットの糞便に触れた後、手を十分に洗わずに食事をすると感染することがあります。
4. 飛沫感染やヒトからヒトへの感染
✅ 便や吐物からの感染
カンピロバクターは人から人へ直接感染することはほとんどありませんが、患者の便や嘔吐物に触れた後に手を洗わずに飲食することで感染する可能性があります。
カンピロバクター腸炎の症状
感染後、通常1〜7日間の潜伏期間があります。一般的な感染症の中では長めの潜伏期間です。
症状としては
- 下痢(水様性または血便を伴う場合もある)
- 腹痛、腹部の痙攣
- 発熱(軽度から中等度の熱)
- 吐き気・嘔吐
- 頭痛や全身の倦怠感
などがあります。一般的には腹痛、発熱、下痢が起こるケースが高いです。
症状は通常、1〜2週間程度で改善しますが、重症化すると脱水や電解質異常を引き起こすことがあります。また、ごく稀にギランバレー症候群という病気を後で発症するケースもあります。(実際に副院長もギランバレー経験者ですが手足が動かなくなる難病です)
カンピロバクター腸炎の診断方法
カンピロバクター腸炎の診断は、主に以下の検査によって行われます。
- 問診と診察:診察で原因となるような食生活があったかを確認します。
- 血液検査:脱水や炎症反応の有無をチェックする場合があります。
- 便培養検査:カンピロバクター菌の有無を確認するための検査です。
基本的な診察は丁寧な問診と、診察による症状の確認です。症状がひどい場合には採血検査(血液検査)で炎症や脱水の有無を評価する場合もあります。
カンピロバクター腸炎の治療方法
多くの場合、カンピロバクター腸炎は自然治癒性ですが、症状が重い場合は以下の治療が必要となることがあります。
主な治療方針
- 水分補給:脱水を防ぐために経口補水液やスポーツドリンクの摂取や点滴治療
- 安静:体力の回復のため、体や腸を休ませることが大切です。
- 対症療法:発熱や痛みの緩和のための解熱鎮痛剤の使用することもあります
- 抗菌薬:重症例や高リスク患者では、医師の判断で抗菌薬が使用されることもあります
基本的な治療は水分補給と対症療法です。しかしカンピロバクター腸炎では症状が強い方もおり、その場合は抗菌薬を使用したり、入院し点滴治療が必要となる患者さんもいます。
症状はかなり強く苦しいため、できるだけならないような対策を取ることが大切です。
カンピロバクター感染を防ぐための対策
❌ 鶏肉の生食を避ける(しっかり加熱して食べる)
❌ 調理器具を使い分ける(肉用と野菜用を分ける)
❌ 手洗いを徹底する(特に生肉を扱った後は石鹸でしっかり洗う)
❌ 飲料水に注意する(井戸水は煮沸する、生乳は加熱処理されたものを選ぶ)
カンピロバクター感染症は、少量の菌でも発症するためしっかりと対策を行うことが大切です。特に鶏肉の取り扱いには十分注意が必要で、生で食べない、調理に使用した調理器具は洗ってから使用するなどは徹底することをお勧めします。
まとめ
カンピロバクター腸炎は、生または加熱不十分な食品を介した感染が主な原因で、下痢、腹痛、発熱などの症状を引き起こします。
通常は自然に回復するものの、脱水など重篤な症状に注意が必要です。予防には、適切な食品の加熱と衛生管理が欠かせません。症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診し、適切な対症療法を受けることが大切だと思いまう。s
【注意】本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりとなるものではありません。必ず医師の診察を受け、適切な治療を行ってください。