便秘の治療では、さまざまな薬が使われます。
患者さんからは「どの薬が一番いいのですか?」と質問されることも多いのですが、消化器内科医の立場では 「便秘のタイプに合っているか」 を最も重視しています。
ここでは、実際の診療でよく使われる便秘薬を、考え方の軸について、お話しします。自身が使っている便秘薬についての理解を深める際にぜひ使用してみてください。
まず押さえておきたい便秘薬の大きな分類
まず、便秘がどのような種類なのか?を考えます。便が固くて出ないのか?おなかの動きが悪いのか?などを参考に薬を選択していきます。
また、便秘自体が大腸自体に異常のある怖い病気ではないか?も念頭にはおいて考えます。
便秘に使う薬は、大きく分けると以下のように考えられます。
- 便をやわらかくする薬
- 腸の動きを調整する薬(柔らかくする+刺激)
- 便を出す力を直接助ける薬
- 特定の原因に対応する薬
この分類を意識すると、薬の使い分けが理解しやすくなります。まずはそれらについてさっと解説します。
本記事では、便秘治療に用いられる薬について、一般名を中心に記載し、代表的な処方品名を補足的に併記しています。薬剤の選択は症状や状態により異なります。
便をやわらかくする薬(浸透圧性下剤)
まずは、便秘薬の治療の基本の便を柔らかくする治療薬です。緩下剤とも呼ばれます。酸化マグネシウムなどが有名かと思います。
- 酸化マグネシウム(マグミット錠® など)
- マクロゴール4000(モビコール®)
- ラクツロース(ラグノスNF経口ゼリー®)
などがあります。定期的に飲むものとしてまず使われる薬です。それぞれ多少の特徴と使い分けがあります。
酸化マグネシウム(マグミット錠® など)
古くから使われている、最もなじみのある便秘薬の一つです。腸の中に水分を引き込み、便をやわらかくします。
比較的自然な排便を促しやすく、軽症から中等症の便秘でよく使われます。薬価も安いです。一方で、腎機能が低下している方ではマグネシウムが上昇する可能性があり、注意が必要となる場合があります。
マクロゴール4000(モビコール®)
腸管内に水分を保持する作用を持つ薬で、便の量を増やし、排便を促します。腹痛が出にくい傾向があり、慢性的な便秘で使われることが多い薬です。カリウムに変化が現る場合があり注意が必要です。
また、酸化マグネシウムに比べると薬価は高いです。
ラクツロース(ラグノスNF経口ゼリー®)
乳糖を主成分とした薬で、腸内環境を整えながら便をやわらかくします。もともとは、肝臓が悪い方の肝性脳症の治療薬として使われていました。経口ゼリーであり、飲みやすいといわれることがあります。
刺激が少なく、比較的穏やかな作用が特徴です。
腸の動きを整える薬(分泌促進薬・消化管運動調整薬)
それでも改善がない場合は、腸の動きを整える薬を検討します。
- リナクロチド(リンゼス®)
- ルビプロストン(アミティーザ®)
- エロビキシバット(グーフィス®)
があります。便を柔らかくする力+腸の動きを助ける力がある薬です。それぞれ似たような作用ではありますが、違いはあります。イメージとしては、
リナクロチド(リンゼス®)⇔ルビプロストン(アミティーザ®)⇔エロビキシバット(グーフィス®)
で左側が便を柔らかくする作用が強く、右側がお腹を動かす作用が強いです。これは添付文書の副作用からも読み解けます。(便を柔らかくする作用が強ければ下痢が多くなり、お腹を動かせば腹痛が多くなる印象)
リナクロチド(リンゼス®)
腸管からの水分分泌を促し、腸の動きを改善します。腹部膨満感やお腹の張りを伴う便秘に使われることがあります。
ルビプロストン(アミティーザ®)
小腸や大腸での水分分泌を促進し、便を出しやすくします。女性の慢性便秘症などで使用されることがあります。リンゼスとグーフィスの中間のようなイメージで使用しています。
エロビキシバット(グーフィス®)
胆汁酸の作用を利用して、自然な排便反射を促す薬です。腸の動きが弱いタイプの便秘で検討されることがあります。胆汁酸を使用するため、慣れるまでに腹痛の副作用が出やすいというデメリットはありますが、お腹を動かす作用はしっかりある薬剤です。
また、臨床試験では、副次的ではありますが、コレステロールが下がるさがるというデータもあります。
便を出す力を助ける薬(刺激性下剤)
下記にある下剤は基本的には頓服として使用する薬剤です。刺激性下剤は便通異常ガイドライン2023でも、オンデマンド(頓服での使用)が推奨されており、常用よりは頓服に向いている薬剤です。
センノシド(プルゼニド® など)
大腸を直接刺激して腸の動きを促します。大腸カメラや、胃のバリウム検査で内服したことがある。という方もいらっしゃる赤い玉のような薬です。夜寝る前に内服して朝に排便を促します。
腸を動かすという意味では即効性がある一方、連用では効きにくくなるなどの注意が必要な薬で、慢性的な使用は避ける方がよいと考えます。
ピコスルファートナトリウム水和物(ラキソベロン内用液® など)
大腸で作用する刺激性下剤で、量の調整がしやすい特徴があります。「どうしても出ないとき」に補助的に使われることが多い薬です。
坐薬・浣腸
便が直腸まで来ているものの、出せない場合に用いられます。排便反射を直接刺激するため、即効性があります。
慢性的に頼り続けるものではなく、便秘がひどくて全くでないなど状況を選んで使う薬と考えられています。
特定の原因に対応する薬
特定の薬剤に対する便秘の治療薬をあります代表的なのはナルデメジンで、トラマドールやトラムセットをはじめとした、オピオイド鎮痛薬に対する便秘薬です。
ナルデメジン(スインプロイク®)
オピオイド鎮痛薬(医療用麻薬)による便秘に対して使われる薬です。痛み止めの効果を弱めることなく、便秘だけを改善する目的で使用されます。
まとめ
異常の便秘薬を駆使して、消化器内科医は次のような点を意識しています。
- 便が硬いのか、腸が動いていないのか
- お腹の張りや痛みが強くないか
- 毎日使う薬なのか、補助的に使うのか
- 長期使用に無理がないか
「強い薬で一気に出す」ことよりも、安全に続けられるかどうかが重要です。また、便秘薬は患者さんの排便状況にあわせて組み合わせて使うことも多いです。便秘の状態によっては、
- 便をやわらかくする薬
- 腸の動きを整える薬
- 必要時に使う刺激性下剤
を組み合わせて治療することもあります。そのため、自己判断で薬を増減せず、症状の変化を伝えながら調整していくことが大切です。
また、それでも便秘が改善しない、血便や腹痛などが伴う、体重減少がある場合には、大腸がんの可能性を考慮し大腸カメラで大腸自体を調べることも検討が必要です。

なにか便通に関して、症状があればお問い合わせいただければ幸いです。
