今年に入り嘔吐や下痢、発熱で受診される方が増え、感染性腸炎(胃腸炎)が流行っています。
感染性腸炎は、ウイルスや細菌などの病原体によって起こる胃腸の感染症です。主な症状として、下痢、嘔吐、腹痛、発熱などがみられます。
多くの場合は数日で改善しますが、感染力が強いものも多く、家庭内や学校、職場で集団感染につながることがあります。そのため、症状のある方だけでなく、周囲の方への感染予防を意識することが重要です。
この記事では、感染性腸炎の主な感染経路と、家庭でできる予防方法について解説します。
感染性腸炎はどのようにうつるのか
まずは感染対策を知る上で、どのように感染するか?を知っておく必要があります。感染性腸炎の多くは、次のような経路で感染します。
接触感染
最も多い感染経路です。嘔吐物や便に含まれる病原体が手につき、その手で口に触れることで感染します。
特に以下の場面で感染が広がりやすいとされています。
- トイレの後
- おむつ交換
- 嘔吐物の処理
- ドアノブや手すりなど共有物の接触
飛沫感染(嘔吐時)
嘔吐の際には、微細な飛沫が周囲に広がることがあります。これを吸い込んだり、付着したウイルスが口に入ることで感染することがあります。
ノロウイルスでは、嘔吐物の処理時に感染が広がるケースが多く報告されており、注意が必要です。汚物を処理する場合には、手袋やエプロンを装着し、次亜塩素酸などで消毒、手洗いを行うようにしましょう。
食品を介した感染
また、症状を起こす食べ物の調理方法が不十分であったり、調理者の手に病原体が付着していると、食品を介して感染することがあります。特に以下が原因となることがあります。
- 加熱不十分の食品(生牡蠣、卵、レバーなどの内蔵系、鶏肉や豚肉など)
- 手洗い不十分の調理
- 調理器具の汚染
これらについては、ノロウイルス、カンピロバクター、サルモネラなどの原因となり、十分に注意が必要です。
感染を防ぐために
感染性腸炎の原因となる、例えばノロウイルスは、少量のウイルスで感染が成立するとされており、感染対策がとても大切です。また、ノロウイルスの検査は限られた患者さんでしか行わず、診断がつかないことも多いです。ノロウイルスを念頭において対策を行いましょう。
特に感染性腸炎の予防で最も重要なのが正しい手洗いです。次のタイミングでは必ず手を洗いましょう。
- トイレの後
- 食事前
- 調理前
- おむつ交換の後
- 嘔吐物処理の後
また、ノロウイルスはアルコール消毒の効果が弱いため、流水と石鹸での手洗いか、ノロウイルスにも対応している消毒液での手洗いが大切です。
手洗いのポイントは?
流水と石けんを使い、30秒程度かけて丁寧に洗うことが大切です。特に洗い残しが多い部分は次の場所です。
- 指先
- 指の間
- 爪の周囲
- 親指
- 手首
アルコール消毒も有効ですが、ノロウイルスなど一部のウイルスには十分な効果がない場合があります。そのため、石けんと流水での手洗いが基本となります。
ノロウイルスかわからない場合でも、ノロウイルスを想定してしっかりと対処するようにしましょう。
嘔吐物や便の処理方法
また、嘔吐物や便には多くの病原体が含まれているため、適切な処理が重要です。処理の際には以下を意識します。
- 使い捨て手袋を着用する
- マスクを着用する
- できるだけ広範囲を消毒する
お子さんで胃腸炎を発症することも多いので、完全に避けきれないかもしれませんが、ノロウイルスなどの原因ウイルスは、口から入ることで感染が成立します。
処置を行った後は、人一倍注意をする。人の口に入る可能性があるものを触る時は注意するなどをおすすめします。
吐いた場所の消毒方法は?
ノロウイルスなどには次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒剤)が有効です。この時期(冬)はノロウイルスかどうかを考えて区別して処置するよりは、ノロウイルスの可能性を考えて消毒、処理することをお勧めします。
市販でも売っているため、近くのドラックストアなどをみてみましょう。また、処理後は十分に換気を行いましょう。
家庭内で感染を広げないための工夫
感染性腸炎の患者さん(お子さん)がいる場合、しっかりとし隔離が必要です。特に次の対策が重要です。
タオルは共有しない
てについたウイルスが伝播する可能性があるため、手拭きタオルやバスタオルは個別に使用しましょう。
トイレを清潔に保つ
可能であればトイレを分けることが理想です。難しい場合は、使用後に便座やレバーを次亜塩素酸系で消毒するとよいでしょう。
洗濯時の注意
汚染された衣類は
- 手袋をつけて扱う
- 他の衣類と分ける
- 可能なら熱湯や塩素系消毒を使用
などの対応を行い、他の人と分けて処理することが大切です。
食事の注意
症状がある間は、調理を控えることが望ましいとされています。
また、仮に症状が回復後もしばらくは排便などからウイルス排出が続く可能性があります。そのため、
- 十分な手洗い
- 食品の十分な加熱
を心がけることが大切です。場合によっては、使い捨て手袋を使用した調理が望ましいでしょう。
また、調理に携わる仕事の場合は職場復帰に関しては、職場の指示にしたがいましょう。
症状がある場合は無理をしない
感染性腸炎では、症状が落ち着くまで自宅で休養することも重要です。特に以下の方は、早めの医療機関受診が必要になることがあります。
- 高齢の方
- 小さなお子さん
- 脱水症状が疑われる場合
- 強い腹痛や高熱がある場合
症状が気になる場合は、医療機関へ相談しましょう。受診しない場合でも水分をしっかりとり、他人への感染対策をしっかりとおこなうようにしましょう。
まとめ
感染性腸炎の予防には、日常生活での基本的な感染対策が重要です。
特に次の3つが大切です。
- 石けんによる丁寧な手洗い
- 嘔吐物や便の適切な処理
- タオルや食器などの共有を避ける
これらを意識することで、家庭内感染を大きく減らすことができます。水分もとれない、脱水のような症状があるなど体調に異変を感じた場合は、無理をせず医療機関へ相談しましょう。
参考文献
- Hall AJ, et al.Norovirus disease in the United States.N Engl J Med. 2013;368:1121-1130.
- Centers for Disease Control and Prevention.Updated Norovirus Outbreak Management and Disease Prevention Guidelines.MMWR Recomm Rep. 2011;60(RR-3):1-15.
- 厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A

