高血圧の治療では、薬による治療にのほかに生活習慣の改善がとても大切です。しかし、生活習慣は診察室の外で行われるものであり、患者さん自身が意識を強く持って取り組まなければ継続が難しいケースもあります。
この課題を補うために開発されたのが、高血圧治療用アプリ「CureApp HT」(処方用デジタル治療アプリ:Digital Therapeutics, DTx)です。
このCureApp HTは、医療機関で医師が処方し、患者さんがスマートフォンで利用する“保険適用のソフトウェア医療機器”です。
このアプリは日々の血圧測定・生活改善の取り組みを記録しつつ、アプリ内で繰り返し生活習慣の改善のアドバイスや、管理をおこなっていき、アプリが患者さんの生活習慣の改善を継続へ導くよう支援します。
どのように高血圧治療をサポートするのか
では実際にCureAppではどのようなサポートを行うのでしょうか。
日々の血圧管理をサポート
まずは、血圧を測定する記録を取ることができます。家庭血圧の記録をアプリに入力すると、アプリが変化を見やすく整理します。また、血圧計と連動して自動で入力する機能、や測定した血圧の写真を撮ることで血圧を自動で入力できる機能などもあり、血圧を測定する負担を減らすことができます。
ご自身の生活パターンと血圧の関係が見えやすくなり、治療の振り返りに役立ちます。
生活習慣の改善を続けやすくする仕組み
アプリは、科学的根拠に基づいた生活改善のポイントを、短いメッセージや動画などで日々解説します。また、Aiの女性アバターと対話形式であり、淡々と説明をうけるより理解がしやすいと感じています。
例として以下のような行動をサポートします。
- 減塩の工夫
- 食事のバランス
- 運動習慣
- 睡眠
- 飲酒・喫煙の見直し など
医師の診療と組み合わせて使用
このアプリ単独で治療が完結するわけではなく、医師の診察・検査・薬物治療と併用することで、その効果を高めることを目指したツールです。
診療時にはアプリからのデータが医師が参照できるため、日々の感じている課題や血圧の推移などを参考にしながら治療方針を相談できます。
高血圧アプリのエビデンス(科学的根拠)
CureApp HTは、お薬と同様にしっかりとした臨床試験で効果を検証され、医療機器として承認、保険適応されています。その根拠となるのはHERB-DH1試験(多施設ランダム化比較試験)です。
研究概要
- 名称:HERB-DH1 Pivotal Trial
- デザイン:多施設・ランダム化比較試験
- 対象:本態性高血圧の患者
- 目的:アプリを用いた生活習慣治療の有効性を検証
主な結果
試験では、アプリを使用したグループで、家庭血圧がより低下する傾向が示されました。
(※治療効果には個人差があります)*Kario K, et al.Efficacy of a digital therapeutics system in the management of essential hypertension: the HERB-DH1 pivotal trial.European Heart Journal, 2021.
当院でCureApp HTをご紹介する際の考え方
当院では、次のような方に説明の選択肢としてご案内する場合があります。
- 高血圧と診断され、生活習慣の見直しを進めたい方
- 家庭での血圧測定を習慣化したい方
- 医師の治療に加えて、日常生活の管理を継続しやすくしたい方
ただし、以下の点を必ずご説明します。
ご利用にあたっての注意点
アプリは 医師の診療を補助するツールであり、これだけで治療が完結するものではありません。また、効果には個人差があり長期にわたる継続利用には、患者さんご自身の取り組みが必要です。
そしてアプリはスマートフォン操作が必要です。しかし、ご高齢の方でもつかいやすいように設計はされており、文字を大きくする機能を有しています。
まとめ
CureApp HTは、生活習慣の見直しを“毎日の暮らしの中で続けられるようにする”ために設計された治療補助アプリです。
高血圧治療の中心である薬・検査・生活習慣改善を、アプリがそっと後押しするようなイメージです。
当院では、患者さん一人ひとりの生活環境・スマホ操作の慣れ・治療方針を踏まえながら、必要に応じてご紹介しています。
ご興味がある方は、診察時にお気軽にご相談ください。
