私たちの体は、動くことで健康を保つように作られています。
けれども、年齢を重ねたり、病気になったりすると、「運動は体に負担がかかるのではないか」「安静にしていた方がよいのでは?」と考えてしまうこともあるでしょう。
しかし運動療法は適切に行えば運動は多くの病気の予防や改善につながりおおきな副作用もない魔法のような治療です。このように、医療的な目的をもって行う運動のことを「運動療法」といいます。
今回はそんな健康のための運動がいかに重要であるかについて解説します。
運動療法はどんなときに使われるの?
まず運動不足になりやすい現代の方において、さまざまな病気の方で運動することは健康のためにはあらゆる点でメリットが大きいことが証明されています。
具体的には以下のようなさまざまな病気の治療や予防に取り入れられています。
- 高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病
- 心臓病や脳卒中を予防したい方
- 慢性の腰痛や関節の痛みを抱えている方
- 転倒しやすくなってきた高齢者の方(サルコペニア予防)
- うつ病や不眠などの精神的な不調がある方
なぜ運動が体に良いのか
ではなぜ運動が体に良いのでしょうか。それは運動をすると、心臓や血管が鍛えられ血のめぐりが良くなります。
血液には酸素や栄養を全身に届ける役目があるので、血流が改善されると全身の臓器が元気になります。さらに、筋肉を使うことで消費するエネルギー量が増えたり、代謝が良くなり血糖値が下がりやすくなったり、血圧が安定したりといった効果もあります。
また、運動をすると脳の神経伝達物質が活性化し、気分が前向きになったり、睡眠の質が良くなったりすることもわかっています。つまり、体だけでなく心にもよい影響があるのです。
「きつくない運動」が、むしろ効果的なこともある
運動というと「走らなきゃ」「汗をかかなきゃ意味がない」と思ってしまうかもしれません。
でも実際には、「少し息が上がるくらい」の軽めの運動を、毎日こまめに続けることの方が、体への負担が少なく、長く続けやすいという意味でも大切です。
たとえば、毎日の散歩、買い物ついでの遠回り、階段を使う習慣なども立派な運動療法です。運動の効果は「どれだけ長く・継続的にできるか」によって変わってきます。
頑張りすぎてすぐにやめてしまうよりは、長く続けられるような運動を心がけましょう。
運動を始める前に、まず知っておいてほしいこと
もし何らかの持病(心臓病、糖尿病、関節の病気など)があり通院している場合は、まず主治医に相談することが大切です。とくに症状がある方が急に無理な運動を始めると、かえって体に悪い影響を与えてしまう可能性があるからです。
また、運動を始めた当初は、体がだるくなったり、筋肉痛が出たりすることもありますが、ほとんどは数日で落ち着きます。逆に、胸の痛みや強い息切れ、関節の腫れや痛みなどが出た場合は、いったん中止して医師に相談しましょう。
どのくらい運動すればいいの?
一般的には、週に150分程度の中強度の有酸素運動(少し息が上がる程度のウォーキングなど)が推奨されています。
これは1日20〜30分程度を目安に考えるとよいでしょう。無理にまとめてやる必要はなく、たとえば10分を3回に分けるなど、生活の中で工夫することも可能です。
自分に合った運動を見つけることが、成功のカギ
運動療法はたくさんおこなうことより「続けること」が最も大切です。
そのためには、「楽しい」「やってみようかな」と思える運動を選ぶことがポイントです。外に出るのが億劫な方には、室内での体操やストレッチ、YouTubeの体操動画を活用するのも良い方法です。
無理しすぎてやめてしまうくらいなら少しからでもはじめてみる。始めやすい方法で初めて見るのも良いと思います。
運動は、薬と同じように「用量・用法」が大切
最後に、運動療法も「薬」と同じように、適切なタイミング、強さ、頻度で行うことが大切です。過ぎたるは猶及ばざるが如しというように、どんなものでも無理や量が多すぎることは問題です。
持病がある方は自己流で頑張りすぎるよりも、医師やリハビリの専門家と相談しながら、無理のない形で少しずつ取り入れていくことをおすすめします。
自分は運動不足だな。。そのように感じる方や生活習慣病を指摘された方はぜひ自分でできる範囲での運動をはじめてみることをお勧めします。
それが、将来の健康や薬での治療を遅らせること、やめれることにつながります。