下肢静脈瘤とは?脚の血管が浮き出る理由と治療の考え方

はじめに

「足の血管がぼこぼこと浮き出てきた」「夕方になると足がむくんで重い」
こうした症状に悩んでいませんか?
それは下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)かもしれません。

静脈瘤とは、脚の静脈が拡張し、蛇行したり膨れ上がった状態のことを指します。命にかかわる病気ではないものの、見た目や生活の質に影響を及ぼすことがあり、早めの対応が大切です。

下肢静脈瘤の原因は何か?

血液が心臓に戻れなくなることが原因

足の静脈には、血液が重力に逆らって心臓へ戻るように導く静脈弁(じょうみゃくべん)が備わっています。
しかし、加齢や妊娠、長時間の立ち仕事などが原因でこの弁が壊れると、血液が逆流し、足の下に溜まってしまいます。これが血管を押し広げ、静脈瘤を引き起こします。

よくある原因やリスク要因

下肢静脈瘤は40歳以上の女性に多くあり、年齢とともに増加していくとされています。

  • 加齢:静脈の弾力性が低下しやすくなる
  • 妊娠・出産:ホルモン変化や子宮による静脈圧迫
  • 立ち仕事:教師、調理師、美容師などの職業に多い
  • 遺伝的要因:親に静脈瘤があると発症しやすい

一般人口の約10~30%が何らかの静脈瘤を有しているとされており、特に女性に多くみられます【DOI:10.1016/j.jvs.2015.10.112】。

下肢静脈瘤の症状とは?

下肢静脈瘤の症状としては

  • ふくらはぎや太ももの血管がぼこぼこと浮き出る
  • クモの巣状に細かい血管が浮かぶ(クモの巣状静脈瘤
  • 脚のむくみ、重だるさ、かゆみ

などがあります。これらは目にみえるため、気になるという方もおおいです。

下肢静脈瘤は進行するとどうなる?

進行すると、以下のような皮膚の変化や合併症が見られることがあります。

  • 色素沈着(皮膚が茶色くなる)
  • 静脈性湿疹(かゆみ、赤み)
  • 皮膚潰瘍(治りにくい傷)

また、攣りやすくなったり、痛みやむくみが気になるようになる場合もあります。

下肢静脈瘤の診断と検査

視診と問診

まずは目で見て分かる特徴的な静脈のふくらみを観察し、症状や生活習慣を聞き取ります。

超音波検査(エコー)

静脈の中を流れる血液の向きや逆流の有無を調べます。痛みがなく、短時間で終わる検査です。
当院でも対応可能です。

下肢静脈瘤の治療の選択肢

静脈瘤があればすぐに治療が必要なわけではありません。特にひどい場合は手術治療になりますが、適応については専門医により判断されます。

1. 弾性ストッキング(圧迫療法)

初期段階の治療として、足を圧迫するストッキングを使って、静脈の逆流を防ぎます。市販のものでは効果が十分でないことがあり、医療用のストッキングが推奨されます。

2. 手術療法

進行している場合や、見た目・症状が強い場合には、血管の処置を行う治療が行われます。近年は血管をレーザーまたは高周波で焼灼する治療が選択されるようです。

主な手術方法

  • 高周波またはレーザーによる血管内焼灼術
    → 血管の内側から熱でふさぐ。痛みが少なく、日帰り可能。
  • ストリッピング手術
    → 古典的な方法で、静脈を抜き取る手術。現在はほとんど行われません。
  • 硬化療法
    → 薬剤を注射して血管を閉塞させる。細い静脈に適応される。

日本静脈学会のガイドラインでも、**焼灼術(RFAやEVLA)**が推奨される第一選択となっています【DOI:10.3400/avd.ra.19-00042】。

日常生活での工夫と予防

立ち仕事・座り仕事の合間にふくらはぎを動かす

  • つま先立ちをする
  • 足首を回す運動
    → 血流のポンプ作用を活性化します

足を心臓より高く上げる時間をつくる

  • 就寝前に5~10分、足をクッションに乗せる
  • ソファで休む際に足を高くする

肥満や便秘を避ける

腹圧の上昇は静脈瘤を悪化させることがあります。バランスのとれた食事を心がけましょう。

放置するとどうなる?進行のリスクとQOLの低下

静脈瘤は、初期には見た目の問題が中心ですが、進行すると皮膚のトラブルや、日常生活に支障をきたす症状につながります。
むくみがでたり、かゆみや痛みで眠れない、傷が治らないなど、生活の質(QOL)が大きく損なわれることもあります。

気になる症状があれば、下肢静脈瘤専門のクリニックもあるため、受診も検討しましょう。

まとめ 〜下肢静脈瘤に早めに気づき、対処を〜

下肢静脈瘤は命に関わる病気ではありませんが、日常の快適さに影響します。弾性ストッキングや生活習慣の工夫で進行を防げることもあります。

見た目や症状が気になる場合は、下肢静脈瘤の専門医による診察や超音波検査などの検査を受けることがおすすめです。

引用文献・参考文献

  1. Nicolaides AN. Investigation of chronic venous insufficiency: a consensus statement. Circulation. 2000;102(20):e126–e163. DOI:10.1161/01.CIR.102.20.e126
  2. Gloviczki P, et al. The care of patients with varicose veins and associated chronic venous diseases: Clinical practice guidelines. J Vasc Surg. 2011;53(5 Suppl):2S-48S. DOI:10.1016/j.jvs.2011.01.079
  3. 日本静脈学会. 静脈瘤に対する血管内治療ガイドライン. 2019年改訂版. DOI:10.3400/avd.ra.19-00042

みどりのふきたクリニック

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