肝臓がん
肝臓がんは、肝臓に発生する悪性腫瘍のことで、主に肝細胞がんと肝内胆管がんの2種類があります。特に、日本では肝細胞がんが多く見られます。
肝臓がんは、ウイルス性肝炎やアルコール性肝障害などを背景に発生することが多く、進行すると肝機能が低下し、全身に影響を及ぼす可能性があります。
肝臓がんの原因とリスク要因
✅ B型肝炎・C型肝炎ウイルス(ウイルス性肝炎が最も大きなリスク要因)
✅ 肝硬変(慢性的な肝臓の炎症ががんの発生リスクを高める)
✅ アルコールの過剰摂取(長期間の飲酒が肝障害を引き起こす)
✅ 脂肪肝(特に代謝機能障害関連脂肪肝炎〈MASH〉)
肝臓がんの症状
肝臓がんは初期にはほとんど症状がなく、進行すると以下のような症状が現れることがあります。
✅ 全身の倦怠感・疲れやすさ
✅ 食欲不振・体重減少
✅ 腹部のしこり・腫れ
✅ 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
✅ 腹水(お腹に水がたまる)
✅ 右上腹部の痛み
ただ、肝臓は表面の膜でしか痛みが生じないため、「沈黙の臓器」と言われています。そのため肝臓の内部で腫瘍ができていてもかなり大きくなって表面の膜までいかなければ痛みも感じないことが多いです。
肝臓がんの症状はほとんどないため、検査をしっかり受けていないと発見することが難しいです。
肝臓がんの診断方法
肝臓がんの診断には、以下のような検査が行われます。
- 血液検査(腫瘍マーカー:AFP、PIVKA-IIなど)
- 腹部超音波検査(エコー)(肝臓の異常を確認)
- CT・MRI検査(腫瘍の大きさや血管への浸潤を評価)
- 肝生検(組織を採取し、がんの確定診断を行う)
肝臓がんを見つける一番の検査は腹部エコーです。脂肪肝がある方や、ウイルス肝炎のある方、採血で肝臓の数字が悪い方などは定期的に検査を受けておくことがおすすめです。
肝臓がんの治療方法
治療法は、がんの進行度や肝機能の状態によって異なります。
手術療法
- 肝切除術(がんが限局している場合に実施)
- 肝移植(肝機能が低下し、適応がある場合に実施)
局所療法ができない場合は手術が可能であるかを評価します。手術での完治が目指せそうな場合には、それぞれの患者さんの肝臓がどれくらいの割合切除をしても大丈夫か?(肝予備能の評価)を行い、手術が可能なら手術を考慮します。
局所療法
- ラジオ波焼灼療法(RFA)(高周波でがんを焼灼)
- マイクロ波凝固療法(MWA)(マイクロ波でがんを焼灼)
癌が比較的小さい場合や1つなど多発していない場合は局所療法を行います。ラジオ波焼却術は、肝臓の外からエコーで腫瘍を確認して専用の機材を腫瘍まで挿入し焼いてくる治療です。
お腹を開ける必要がなく、手術より負担が少なく、腫瘍のみを焼却するため、肝臓を切除する場合よりも負担が少ないです。
動脈塞栓療法(TACE)
- 肝動脈塞栓術(抗がん剤を腫瘍へ直接注入し、血流を遮断)
手術も局所療法もできない場合、破裂し出血のコントロールがつかない場合などは、動脈からの治療を行います。
うまく治療が行えればこの治療で腫瘍をコントロールすることも可能な場合もあります。
化学療法・分子標的薬
ソラフェニブ、レンバチニブ(進行がんに対する分子標的薬)など様々な治療法が確立されています。内服または点滴によりそれらの投与を行い、肝臓がんに対して治療を行います。
緩和ケア
進行がんで根治が難しい場合、症状を緩和する治療を実施することもあります。特に肝機能が悪くなり黄疸が出現したり、腹水が出現するとそれに対する治療を併用します。
肝臓がんの予防方法
✅ B型・C型肝炎の適切な治療と管理
✅ 禁酒・節酒を心がける
✅ 適度な運動とバランスの良い食事(肥満や脂肪肝を予防)
✅ 定期的な健康診断を受ける(特に肝炎のある人は定期検査が重要)
肝臓がんに予防には、肝臓のダメージをできるだけ少なくして肝硬変に進行させないことと、定期的な検査で異常を早めに察知して治療を行うことが大切です。
まとめ
肝臓がんは早期発見が難しい病気ですが、定期的な検査とリスク管理によって予防や早期治療が可能です。特に、肝炎ウイルスに感染している方や肝硬変のある方は、定期的な診察を受けることが大切です。気になる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
【注意】 本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりとなるものではありません。必ず医師の診察を受け、適切な治療を受けることをおすすめします。