前立腺肥大症
前立腺という尿道の部分の近くにある男性特有の臓器です。
前立腺肥大症とは、前立腺が加齢に伴って大きくなり、尿道を圧迫することで排尿に関するさまざまな症状を引き起こす病気です。
主に50歳以上の男性に多くみられ、命に関わる病気ではありませんが、生活の質にかなり影響を与える病気です。
前立腺肥大症の原因
前立腺肥大症の主な原因は、加齢と男性ホルモンの影響と考えられています。また、心疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病や飲酒、喫煙、肥満なども危険因子です。
そのため当院のような生活習慣病の方が多く通われている医院ではリスクが高い方が多いとも言えます。
また、遺伝的な要因もあると言われており、父親と兄弟に前立腺肥大症の手術既往がある場合には、 3.5 〜6.1 倍の発症リスクがあるという報告もあります。(*Sanda MG, Beaty TH, Stutzman RE, Childs B, Walsh PC. Genetic susceptibility of benign prostatichyperplasia. J Urol 1994; 152: 115 –119)
前立腺肥大症の症状
前立腺が大きくなることで尿道が圧迫され、排尿に関する症状が現れます。
患者さんの訴えとして多くあるのは「最近残尿感がある」「夜トイレに起きる回数が増えて眠れない」等です。
✅ 排尿困難(尿が出にくい、時間がかかる)
✅ 頻尿(特に夜間のトイレ回数が増える)
✅ 尿の勢いが弱い(ちょろちょろでる)
✅ 残尿感(排尿後も尿が残っている感じがする)
✅ 尿意切迫感(突然強い尿意を感じ、我慢しづらい)
また、これらの症状が症状が進行すると、尿閉(尿が全く出なくなる)や腎機能の低下という重篤な症状が出てくることもあります。
上にあるような症状が当てはまる方は一度相談してみると良いかもしれません。
前立腺肥大症の診断方法
前立腺肥大症の診断には下記のような評価を行います。
- 問診・症状の評価(症状の問診やIPSSスコアなどを用いた評価)
- 尿検査(その他の頻尿の原因の評価)
- 血液検査(PSA検査)(前立腺がんの可能性を除外)
- 超音波検査(エコー)(前立腺の大きさや残尿の有無を確認)
- 尿流量測定(尿の勢いや排尿の状態を測る)
- 直腸診(肛門から前立腺の大きさや硬さを触診)
まずは、問診で前立腺肥大の症状があるか?を確認します。それらがある方では、尿検査や採血検査で、前立腺肥大症と同じような症状を起こす可能性がある、尿路感染症や前立腺癌ではないか?の評価を行います。
また、合わせてエコーや直腸診で直接前立腺の評価を行う場合もあります。
前立腺肥大症の治療方法
前立腺肥大症の治療には、薬物療法・手術療法・生活習慣の改善があり、症状の程度に応じて選択されます。
① 薬物療法
軽度~中等度の症状には、薬の内服による治療が一般的です。
- α1遮断薬(尿道を広げて排尿を改善)
- 5α還元酵素阻害薬(前立腺のサイズを小さくする)
- 抗コリン薬・β3作動薬(頻尿や尿意切迫感を軽減)
などです。当院でもしっかりとスクリーニングをした後にまずは薬剤による治療を開始します。それでも改善が難しい状況となれば専門外来(泌尿器科)へ紹介も考慮します。
② 手術療法
手術加療以降は専門外来で検討されます。薬物療法で十分な効果が得られない場合、手術が検討されます。
- TURP(経尿道的前立腺切除術):内視鏡を用いて前立腺の一部を切除。
- レーザー治療(HoLEPなど):レーザーで前立腺組織を削る。
- 前立腺動脈塞栓術(PAE):動脈を塞いで前立腺の縮小を促す。
③ 生活習慣の改善
軽度の症状の場合、生活習慣の見直しで改善することもあります。適切な運動や肥満の改善なども重要です。
✅ カフェインやアルコールを控える
✅ 適度な運動をする(肥満予防や血流改善のため)
✅ 排尿習慣を整える(無理に我慢しない、規則正しくトイレに行く)
内服治療に合わせて生活習慣の改善は重要です。
まとめ
前立腺肥大症は加齢に伴い多くの男性に発症する病気ですが、適切な治療で症状を改善できます。排尿の異常を感じたら、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
気になる症状あれば、ぜひ診察時にご相談ください。
【注意】 本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりとなるものではありません。必ず医師の診察を受け、適切な治療を受けることをおすすめします。