感染性腸炎
感染性腸炎(かんせんせいちょうえん)は、ウイルスや細菌などの病原体によって腸に炎症が起こる病気です。
主に、下痢や腹痛、発熱、嘔吐などの症状が現れます。症状が比較的強く他人に感染させることもあります。
”お腹の風邪”と表現されることもあります。通常は自然に改善を認めますが、特に免疫力の低い高齢者や小児では、重症化することがあるため注意が必要が必要です。
感染性腸炎の原因
感染性腸炎は、ウイルス性と細菌性に大きく分けられます。
ウイルス性腸炎
ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどがさまざまなウイルスが原因となります。
1年中発生しますが冬季に流行しやすい傾向があります。(特にノロウイルス)また、感染力が強く、飛沫感染や接触感染で広がりしばしば集団感染を引き起こします。
細菌性腸炎
サルモネラ腸炎、カンピロバクター、病原性大腸菌(O157など)、腸炎ビブリオ、赤痢菌などの細菌が原因となります。食中毒の原因になりやすく、夏季に発生しやすい特徴があります。
また、豚肉、鶏肉などの生肉や魚介類など動物を介して感染するケースが多く、多くは生食が原因となります。
感染性腸炎の主な症状
感染性腸炎の症状は、原因となる病原体によって異なりますが、一般的には以下のような症状が見られます。
- 水のような下痢(頻繁な排便)
- 腹部のさまざまな部分に現れる腹痛
- 発熱(ウイルス性は微熱、細菌性は高熱になりやすい)
- 嘔吐や吐き気
- 血便(細菌性腸炎で見られることがある)
この中でも、38℃を超える発熱、血便、強い腹痛は注意すべき症状です。これらの症状がある場合には細菌性の可能性もあるため病院への受診を検討しましょう。
感染性腸炎の診断方法
感染性腸炎は、以下の方法で診断されます。
- 問診と症状の確認(食事内容や発症時期、流行状況を確認)
- 便検査(細菌やウイルスの特定)
- 血液検査(炎症の有無を確認)
- 迅速検査(ノロウイルスやロタウイルス、コロナウイルス)
感染性腸炎では原因と思われるウイルス、最近により治療が異なります。
多くの感染性腸炎は対症療法(水分補給や整腸剤などによる治療)で自然に改善します。そのため、問診と腹部の診察で重篤となる腸炎でないと考えられる場合で、全身の体調が悪くなければ、特別検査はせずに対症療法とする場合も多いです。
しかし、重篤になりやすい高齢者、乳児や基礎疾患がある方、食事が取れないなど全身の状態が良くない(ぐったりしている方)、発熱、血便等細菌性腸炎が疑われる方には、検査を行い詳しく調べます。
例えば、ノロウイルスの迅速検査(便)は当院でも施行可能ですが、3歳未満や65歳以上、がん患者など一定の条件を満たす場合に保険が適用できます。その理由は重症化しやすいからです。
感染性腸炎の治療方法
治療方法は、原因となる病原体や症状の程度によって異なります。
① ウイルス性腸炎の治療
- 特効薬はなく、対症療法(症状に対する治療薬)が基本となる
- 脱水症を防ぐために水分補給をこまめに行う(経口補水液やスポーツドリンクを推奨)。
- 消化に良い食事を摂る(おかゆ、スープ、バナナなど)。
ウイルス性腸炎の場合は自然に改善するものが多く、症状を抑える薬を飲みながら、腸を休め、脱水に気をつけていく治療(対症療法)がメインとなります。また、脱水がひどい場合は点滴の治療を行う場合もあります。
② 細菌性腸炎の治療
- 抗生物質が必要な場合もある(サルモネラ腸炎や腸炎ビブリオでは、抗生物質の使用が慎重に判断される)。
- 水分補給を十分に行い、消化に良い食事を食べる
細菌性腸炎に関してもウイルス性腸炎と同様に対症療法が中心となりますが、一部で抗菌薬による治療の適応となる腸炎があります。
問診、診察でその対象と判断される場合には抗菌薬での治療を行います。
感染性腸炎の予防方法
感染性腸炎は、日常生活の工夫で予防できます。
- 手洗いを徹底する(食事前やトイレ後に石けんでしっかり洗う)
- 食品の加熱処理を十分に行う(生肉・魚介類はしっかり加熱)
- 調理器具を清潔に保つ(包丁・まな板の消毒を行う)
- 食品の適切な保存を行う
- 感染者との接触を避ける(特にノロウイルス流行時には注意)
また、ノロウイルスは、アルコール消毒が効果が少ないため、手洗いまたは次亜塩素酸による除菌が必要です。
特に吐物や便は感染力が強いため、患者の吐物や便は十分に注意して処理をするようする必要があり注意して下さい。
まとめ
感染性腸炎は、適切な対応をすることで多くは早期に回復できる病気です。
- 発症後は無理せず安静にする
- 水分補給をしっかり行い、脱水を防ぐ
- 回復期には消化に良い食事を摂る
- 症状がひどい場合は病院へ相談する
特に、症状が長引く場合や高熱・血便が見られる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。