今年から消化器内科の医師が加わりました。

Q:ピロリ菌治療をしたらもう検査は受けなくていい?

今回はよく患者さんに聞かれることについて答える内容をお伝えしたいと思います。胃カメラやピロリ菌除菌の治療をしていると良く聞かれるのはこの質問です。

ピロリ菌治療をしたらもう検査は受けなくていいですか?

それについて今回はまとめつつ、お答えしたいと思います。

ピロリ菌除菌後も定期的な検査は受けたほうがいい

結論からいうと

ピロリ菌除菌後も1年に一回など定期的な胃カメラの検査は受けたほうがいい

です。その理由について説明する前になぜピロリ菌が重要なのかを先に説明します。

そもそもピロリ菌とは?

そもそもピロリ菌、ピロリ菌と聞いたこともあるかと思いますが、ピロリ菌とはなんなのでしょうか。

長さ2.5 – 5 µmでらせん菌の形状の菌で幼少期に口から入り胃に住みつき、胃炎を起こす菌

です。

なぜピロリ菌が重要なのか

なぜピロリ菌が重要なのかというと胃がんが発生するのは、ピロリ菌が感染して炎症をおこした胃粘膜からがほとんどであり、萎縮性胃炎が進行すると胃がん発生の危険性があるからです。

実際の研究でも、10年間の観察で、ピロリ感染のなかった280人は誰も胃癌が発生しなかった(0人)のに対して、1246人のピロリ菌感染者からは36人(2.9%)で胃癌が発生したことが報告されています。*Uemura N, et al.:N Engl J Med. 2001;345(11)

つまりピロリ菌感染がある=胃癌のリスクがあるというです。(ピロリ陰性の方に発生する珍しい胃癌も存在します)

ピロリ治療後にも検査をしたほうがいい理由

ピロリ菌治療後にも胃カメラを行ったほうがいい理由は簡単にいうとピロリ除菌後の胃にも胃癌は発生するからです。

ピロリ菌の治療をしたらもう完治?

除菌しているだから治療は終わりでしょ?と思われるかもしれませんが、除菌で胃がん発生の危険性が下がることは確かですが、ゼロにはなりません。

こちらも2008年の研究で、胃癌のEMR(治療後)の患者さんでピロリ除菌治療を行うことで、ピロリ菌感染が続く人と比較して除菌により胃癌発生率が31%低下することが報告されています。

しかし、逆を返すとピロリ菌未感染の人がほとんど胃癌がないことに比較して、31%下がったとしても依然として胃癌の発生リスクがあるということです。

私がよく患者さんに

ピロリ菌は幼少期に感染しているケースがほとんど。つまり除菌する時点で数十年が経過している場合が多いです。それだけ長年ピロリ感染による胃へのダメージは不可逆的(治らない)状態になっています。タバコを30年吸った後に禁煙してもリスクが残るように、長年の胃へのダメージは残っているためピロリ菌を治療(禁煙)しても胃癌のリスクは残ります。

とお伝えしています。

ピロリ菌除菌を行なっても、長年にわたる感染による慢性胃炎(胃の壁の変化)は残ります。その慢性胃炎を母体に胃癌は発生するわけです。

ピロリ菌除菌後の中でも高リスクな方

ピロリ除菌後の方の中でも高リスクな方の特徴も研究でわかっています。それは

  • 男性
  • 高度の胃粘膜萎縮
  • 除菌前に胃がんの指摘があった
  • 高齢


*日本消化器内視鏡学会2018 年 60 巻 1 号 p. 5-13

です。これらに該当する方は特に注意が必要です。

どれくらいの頻度で検査をすればいいのか?


ピロリ菌除菌後は少なくとも2年、3年に一度、ハイリスクの方や症状がある方は1年に一回は胃カメラ検査を受けることをオススメします。理由は

  • 上で話したように胃癌のリスクが残っていること
  • 胃癌は早急に発見できればお腹を切る手術をせずに治せる可能性が高い

からです。現在は早期胃癌は内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という、胃カメラを使った内視鏡手術での治療があり、早期に発見すれば体への侵襲(負担)が少なく、治癒を目指せるのです。

ESDは胃癌のある胃の壁の表面を削ぎ落とすように切除する内視鏡手術です。通常は寝てやります。検査は30分〜数時間で合併症がなければ1週間くらいの入院で、お腹を切らずに治療が完了します。


まとめ

今回はQ:ピロリ菌治療をしたらもう検査は受けなくていい?について

除菌治療をした後も定期的な胃カメラ検査したほうがいい理由をご説明しました。

ぜひピロリ菌除菌をしたけど、その後検査を受けていない方はこの記事を読んだ機会に検査を受けることも検討してみてください。

通院中の患者様で何か御不明点があれば、診察時にも言っていただければさらなるご説明をさせていただきますので、いつでもご用命ください。