はじめに
大腸内視鏡検査を受けた際に、「ポリープがあるので切除しましょう」と言われることがあります。
ポリープが見つかった場合、多くの方が「すぐに取らないといけないの?」「様子を見ても大丈夫なのでは?」と疑問に思われるかもしれません。
本記事では、なぜ大腸ポリープを切除するのか?と、「クリーンコロン(ポリープのない腸の状態)」を目指すことの重要性について、分かりやすくご説明します。
大腸ポリープとは?
ポリープとは、消化管の粘膜から突き出るようにできる小さな隆起のことです。大腸にできるポリープの多くは良性ですが、一部は将来的にがん化する可能性があります。
ポリープの主な種類は以下の通りです。
- 過形成性ポリープ:多くの場合がん化しない良性のもの。
- 腺腫性ポリープ:がんに進展する可能性があるため注意が必要。
- 鋸歯状(きょしじょう)ポリープ:中には高リスクのタイプも含まれます。
この中でもりすくのあるものが切除の対象となります。
ポリープを切除する理由
なぜ大腸ポリープを切除するのか?について解説します。
1. 大腸がん予防につながる
大腸がんの多くは、腺腫性ポリープが年単位で変化していく中で発生すると考えられています(adenoma-carcinoma sequence)。
つまり、ポリープの段階で切除することが、がんを未然に防ぐ一番確実な方法です。
ポリープの中でも腺腫性ポリープや一部の鋸歯状ポリープは、「がんの前段階」とされています。そのため、癌のあかちゃんのようなものと考えることもできます。そのため、切除することで将来的な大腸がんのリスクを減らすことができます。
ちなみにすべてのポリープが切除対象となるわけではありません。ポリープ切除には手術による合併症のリスクもあるため、それらを考慮して適切なポリープを切除することが大切です。

2. 症状が出る前に対応できる
ポリープ自体は多くの場合自覚症状がありません。ただ、徐々に大きくなり大腸ポリープが進行すると出血や貧血、腸閉塞の原因になることもあります。
そこから対処すると癌化したり、取るのに入院が必要だったりとデメリットが多いため、症状が出る前の段階での切除が重要です。
3. 内視鏡検査と同時に治療が可能
大腸内視鏡検査中にポリープが発見された場合、多くはその場で切除が可能です。そのため、検査と治療を同時にできるため、追加の手術や入院を要さずに治療ができるます。検査自体が楽な検査でもないため、一回で終わらせることで体への負担も少なく済みます。
クリーンコロン(大腸ポリープがない腸)とは?
クリーンコロンという概念があります。「クリーンコロン(clean colon)」とは、大腸内視鏡検査でポリープがなく、病変が見当たらない状態の腸を指します。
医療現場では、ポリープがない、あるいは以前に見つかったポリープをすべて切除し、その後の検査でも再発していない状態を「クリーン」と表現します。
クリーンコロンの重要性とメリット3つ
近年では「クリーンコロン」という概念が、がんの2次予防(がんが起きる前にリスク要因を除去する)として重要視されています。
国国立がん研究所(NCI)の報告によれば、腺腫性ポリープの切除は大腸がんのリスクを低下させる可能性があります。
また、大腸ポリープは腺腫が多く、これらはがんに進展する可能性があります。さらに1センチメートル以上の大腸ポリープはさらに癌のリスクが高いため、そららは積極的に大腸がんのリスクを低下させる可能性があります。
再発予防の第一歩
一度ポリープを切除しても、新たにポリープができることがあります。
とくに腺腫性ポリープが見つかった方は、定期的な内視鏡検査を受け、「ポリープのない状態=クリーンコロン」を維持することが再発や進行予防につながります。
腸の健康維持と生活習慣の改善
クリーンコロンを維持するためには、検査だけでなく日々の生活習慣の見直しも大切です。
野菜や海藻などの食物繊維を意識的に摂取し、適度な運動を行うことで腸内環境が整い、ポリープの予防にもつながると考えられています。
次回検査の精度が高まる
クリーンコロンの状態が続いていると、次回の検査でも小さな病変が見つけやすくなるとされています。
つまり、早期の異常発見と、より質の高い予防的管理が可能になるというメリットがあります。
まとめ
大腸ポリープは無症状であっても将来的にがん化するリスクがあるため、早期の発見と切除が重要です。
そして、内視鏡検査によってポリープを取り除き、「クリーンコロン」の状態を維持することで、大腸がんの予防につながります。
ポリープ切除や内視鏡検査に不安を感じる方も多いと思いますが、不明な点があれば医師にご相談ください。
早めの検査と正しい知識が、あなたの健康を守る大きな一歩になります。