長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは?
長谷川式認知症スケール(Hasegawa’s Dementia Scale-Revised:HDS-R)は、認知症の有無やその程度を簡便に評価するための質問式検査です。
日本で開発され、特に高齢者の認知機能スクリーニングとして広く用いられています。医療機関のみならず、地域包括支援センターや介護現場でも活用されています。
この検査は9項目の質問で構成され、最大30点満点となっており、点数が低いほど認知機能の低下が疑われます。
HDS-Rの具体的な内容は?
9つの質問項目を回答することで検査ができます
HDS-Rは以下のような内容で構成されています。検査は主に医療従事者や専門の訓練を受けた職員が実施します。
質問内容(項目) | 配点 |
---|---|
年齢の確認 | 1点 |
日付の見当識(年月日・曜日) | 4点 |
場所の見当識(現在地) | 2点 |
3つの単語の記銘 | 3点 |
計算(100から7を順に引いていく) | 2点 |
数字の逆唱 | 2点 |
物品の呼称(身近な物を2つ示す) | 2点 |
過去の出来事の想起 | 2点 |
最初の3つの単語の再生(記憶力の確認) | 6点 |
合計:30点満点
点数の目安と評価
点数はこのような解釈ができます。
得点範囲 | 評価の目安 |
---|---|
27~30点 | 正常範囲 |
21~26点 | 軽度の認知機能低下が疑われる可能性あり |
20点以下 | 認知症の疑いがある |
※これはあくまでスクリーニングの目安であり、HDS-Rの結果だけで認知症と診断されることはありません。
また、正常であっても、MCIという認知症の前段階の可能性はあります。
HDS-Rが使われる場面
医療機関での診察時
内科や神経内科、老年科などで、もの忘れが心配な方の初診時に行われることが多いです。数分で実施できるため、問診の延長として行える簡便な検査として重宝されています。
地域の認知症予防活動
地域包括支援センターや高齢者向け健診、認知症カフェなどでも、初期スクリーニングとしてHDS-Rが導入されている例があります。また、静岡市では今年度より、認知症検診が開始されるため、対象の方には通知が来る予定です。
HDS-Rの限界と補助的役割
HDS-Rだけでは診断できない
HDS-Rはあくまで「スクリーニングツール」です。確定診断のためには、画像検査(MRIやCT)、血液検査、生活歴の詳細な把握などが必要です。また、教育歴や文化的背景により点数が影響されることもあります。
繰り返し行われると試験問題自体を覚えてしまって、正確に判定できない場合もあります。
また、認知症にはさまざまな種類があり、正確に診断するためには専門機関での検査が必要となります。
認知症を早期に見つけるために
認知症は早期発見・早期対応が非常に重要です。HDS-Rのような検査を受けることで、生活の変化に早く気づき、適切な支援につなげることができます。
ご家族の「ちょっと気になる」が出発点
- 最近同じ話を何度もする
- 財布や鍵などを置き忘れることが増えた
- 日付や曜日を混同することがある
このような変化が見られた場合、一度医師に相談し、必要に応じてHDS-Rのスクリーニング検査を受けてみることをおすすめします。
みどりのふきたクリニックでの対応
当院では、もの忘れが気になる方やご家族からのご相談に応じて、HDS-Rの実施をおこなっています。また、精査が必要に応じた専門医への紹介を行っています。地域のかかりつけ医として、早期発見と安心の支援体制を大切にしています。
まとめ
- 長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、日本で開発された認知症スクリーニング検査です。
- 30点満点の質問式で、認知機能の低下を簡便に把握できます。
- 結果はあくまで参考であり、確定診断にはさらなる評価が必要です。
- 気になる変化があれば、早めの受診をおすすめします。
参考文献
- Hasegawa K. The Clinical Dementia Rating (CDR) and the Hasegawa Dementia Scale (HDS). Psychogeriatrics. 1991;1(1):95-98.
- Ideno Y, Takayama M, Hayashi K, Takagi H, Sugai Y. Validity and reliability of the Japanese version of the Hasegawa Dementia Scale-Revised (HDS-R). Psychogeriatrics. 2012 Sep;12(3):133-41. doi: 10.1111/j.1479-8301.2012.00393.x