大腸癌(大腸がん)とは?

大腸がん

大腸癌は、日本人に多い悪性腫瘍の一つで、結腸や直腸といった大腸に発生するがんです。

欧米化した食事により近年増加してきており、発生部位別がん死亡者数(2018年) では、大腸がんはがんによる死因のうち、男性で3位、女性で1位と上位を占めており、大変多いがんと言えます。

また、早期には自覚症状が少ないことが多く、定期的な検診での早期発見が重要です。今回はそんな大腸がんについて解説します。

大腸の働きと大腸癌の発生部位

大腸は食べ物の消化がほぼ終わった後に水分を吸収し、便をつくる役割を担っています。大腸癌はこの大腸の粘膜にある細胞が異常に増殖することで発生します。

大腸がんは大腸のすべての場所で発生し、発生する場所により盲腸癌、S状結腸癌などさまざまな分類に分かれます。

大腸解説(図)
大腸解説(図)

大腸癌の原因とリスク要因

大腸がんの原因やリスクには下記のようなものがあります。

リスク①生活習慣の欧米化など

以下のような生活習慣は、大腸癌のリスクを高めるとされています。特に欧米化した食事は大腸がんが日本で増えている原因ともいわれています。

  • 高脂肪・低食物繊維の食生活
  • 飲酒、喫煙
  • 運動不足
  • 肥満

リスク②遺伝や家族歴

家族に大腸癌の方がいる場合、リスクが高くなることがあります。特に「家族性大腸腺腫症(FAP)」や「遺伝性非ポリポーシス大腸癌(リンチ症候群)」などの遺伝性疾患をもつ方は注意が必要です。

リンチ症候群では大腸や子宮の癌のリスクが高まる疾患で、家系内に大腸がんや子宮体がんの患者が多い場合に疑われます。

リスク③年齢が上がった

どんな癌でもそうですが、年齢があがるとリスクが上がります。

大腸癌は一般的に50歳以上を超えるとリスクが高くなると言われており、年齢が上がるとリスクが高まります。

大腸癌の症状は?

大腸癌の症状は、がんの進行度や発生した部位によって異なります。以下のような症状が見られることがあります。

ただ、初期には症状があまりなく、静岡市などでおこなっている”便潜血検査”で検査をうけて診断される方もいらっしゃいます

  • 血便(赤い血が混じる便)
  • 下痢や便秘の繰り返し
  • 便が細くなる
  • 腹痛や腹部膨満感
  • 原因不明の体重減少
  • 貧血(とくに右側の結腸がんでは目立つことがあります)

これらの症状があるからといって必ずしも大腸癌とは限りませんが、気になる症状がある場合は早めに受診しましょう。

大腸癌の検査方法

大腸がんを診断する上で行う検査はいろいろあります。症状がある場合、ない場合や、状態や状況により医師が判断し検査を行います。

便潜血検査(スクリーニング検査)

便の中に血液が混ざっていないかを調べる簡易な検査です。大腸癌検診の第一歩として広く行われています。症状がある方には適さず、通常は検診として行われます。

また、便潜血検査が陽性でも、精密検査(大腸カメラ)で異常なしの方もいます

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

大腸がんを診断、治療する上で一番大切な検査です。下剤を飲んだ後に肛門からカメラを挿入し、大腸の内部を直接観察する検査です。ポリープやがんを早期に発見でき、その場でのポリープ切除も可能です。

CT検査・MRI

大腸カメラが行えない方やがんの進行度(ステージ)を評価するために主に検査が行われます。ただ、大腸カメラと比較して被曝があること、診断のみで治療を同時に行えない(ポリープ切除など)ことが弱みです。

また、下剤を飲んで行うCTコロノグラフィー以外では、大腸の中にある便のため、早期のものは診断に至りません。

生検(組織検査)

大腸がんは見た目のみで診断することは通常ありません。正確な診断は、内視鏡検査中に病変の一部を採取し、顕微鏡で調べて大腸がんの診断を確定します。結果が出るまでに通常1週間程度かかります。

大腸癌の治療法

一度大腸がんと診断された場合、治療を考えます。治療は、がんの進行度や患者さんの体力・希望に応じて選択されます。

内視鏡治療(ESDなど)

大腸癌が早期な場合は大腸カメラで治療が完遂する場合があります。パターンとしては3パターンあり

  • 大腸ポリープを取ったら癌だった
  • 早期の大腸がんで取れると判断し、ポリープと同様に内視鏡で切除した
  • 早期の大腸がんだが、それなりに大きいため入院し内視鏡的粘膜剥離術(ESD)で切除した

です。どちらにせよ早期に発見できればお腹を切る手術をせずに完治する可能性があります。

手術療法(腹腔鏡、開腹手術)

がんがある部分の大腸を切除し、リンパ節も同時に摘出します。大腸がつなぎ合わせられる場合はつなぎ合わせ、難しい場合は人工肛門を作成します。

化学療法(抗がん剤)

進行がんで手術ができない場合や手術後に、6ヶ月程度限定で再発予防の目的で行われます。その方のがんの状態により内服薬や点滴による投与が選ばれます。

放射線療法

特に直腸がんでは、手術の前後に放射線を当てることで治療効果を高めることがあります。

大腸癌の予防と早期発見

大腸がんは早期に発見することがとても大切であり、対象となれば静岡市の検診(さまざまな医療機関で可能)の”便潜血検査”を行うことが重要です。また、食生活を気をつけることでリスクを下げることはできます。

生活や食生活の改善

  • 食物繊維を多く含む野菜・果物を積極的に摂る
  • 赤身肉や加工肉(ソーセージ、ベーコンなど)は摂りすぎない
  • お酒・タバコを控える
  • 日常生活の中でウォーキングなど軽い運動を続けることが効果的

とされています。これらの生活習慣や食事を気をつけることは大切です。

定期的な検診

日本や海外のガイドラインでも、多くのガイドラインで40歳を過ぎたら毎年の便潜血検査(大腸がん検診)を受けることが推奨されています。なんとなく抵抗がある方も多いですが、大腸がんの早期発見には毎年の便潜血検査の有効性が高いことは報告されており行うことを推奨します。

また、症状がある方は早めに医師と相談の上で内視鏡検査を受けることも検討しましょう。

まとめ

大腸癌は、早期発見・早期治療によって完治が期待できるがんです。症状が出る前からの検診が鍵になり、また排便時の血便や長引く便秘などに実は大腸がんが隠れている場合があります。

日々健康的な生活習慣を心がけながら、気になる症状があれば早めの受診、相談を心がけましょう。

参考文献・エビデンス

  1. Bray F, et al. Global cancer statistics 2018: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide. CA Cancer J Clin. 2018;68(6):394-424. DOI: 10.3322/caac.21492
  2. Siegel RL, et al. Colorectal cancer statistics, 2020. CA Cancer J Clin. 2020;70(3):145-164. DOI: 10.3322/caac.21601
  3. 日本消化器病学会「大腸癌診療ガイドライン 2022年版」
  4. https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/colorectal_surgery/140/index.html

みどりのふきたクリニック

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