はじめに
大腸カメラ(正式には「下部消化管内視鏡検査」)は、大腸の粘膜を直接観察できる非常に有用な検査です。
ポリープやがんの早期発見にもつながるため、特に40歳以上の方や、便に血が混じる・便秘と下痢を繰り返すといった症状がある方におすすめされることがあります。
以下では、患者さんからよくいただくご質問にQ&A形式でお答えしていきます。
Q1. 大腸カメラはどんな検査ですか?
A1.
肛門から細長い内視鏡を挿入して、大腸(直腸〜盲腸)全体の粘膜を観察する検査です。
ポリープや炎症、出血、がんなどの異常を見つけることができ、必要に応じて組織を採取(生検)したり、ポリープを切除することもあります。
Q2. 痛くないですか?苦しくありませんか?
A2.
以前は「つらい検査」という印象がありましたが、鎮静剤(眠くなる薬)を使用することで、ほとんど苦痛なく受けられることが多くなっています。
ただし、体質や腸の長さ、癒着の有無によって感じ方には個人差があります。
ご希望があれば鎮静剤を使用することも可能ですので、事前にご相談ください。
Q3. どんな人が受けたほうがいいですか?
A3.
以下のような方は、大腸カメラによる検査が勧められます。
- 便に血が混じることがある
- 慢性的な便秘や下痢が続いている
- 体重が急に減った
- 腹痛や腹部膨満感がある
- 40歳以上で一度も大腸検査を受けたことがない
- 健診で便潜血が陽性だった
- 家族に大腸がんの方がいる
Q4. 事前に何か準備が必要ですか?
A4.
はい、検査前日からの食事制限と、当日の下剤(腸管洗浄剤)の服用が必要です。
腸内をきれいにすることで、粘膜をしっかり観察できるようになります。
準備の方法は、当院から詳しい説明書をお渡しします。
Q5. 検査にかかる時間はどれくらいですか?
A5.
検査自体の所要時間は15〜30分程度です。
ただし、前後に着替えや鎮静剤の準備、回復時間を含めると、1〜2時間程度の滞在が必要になります。
Q6. ポリープが見つかったらどうなりますか?
A6.
その場で切除できる大きさ・形状のポリープであれば、検査中に切除することが可能です(ポリペクトミー)。
切除後は出血を防ぐために、数日間の運動制限や飲酒制限などをお願いすることがあります。
Q7. 検査にリスクはありますか?
A7.
一般的には安全性の高い検査ですが、ごく稀に以下のような合併症が起こることがあります。
- 腸に穴があく(穿孔):約0.01〜0.1%
- 出血(特にポリープ切除後):約0.1〜1%
- 鎮静剤による呼吸抑制や低血圧
いずれも非常に稀ですが、リスクについては事前にご説明します。
Q8. 保険は使えますか?
A8.
はい、症状がある場合(便潜血陽性・腹痛・下痢など)や、医師が必要と判断した場合は保険適用となります。
健康診断目的(自費)の場合は、保険外診療となりますので、費用についてはお問い合わせください。
Q9. 生理中でも受けられますか?
A9.
検査自体に問題はありませんが、できれば避けたほうが望ましいとされます。
出血によって体調が不安定になったり、トイレの頻度が増えるなどで下剤の服用がつらくなる場合があるためです。
可能であれば、別日に予約を変更しましょう。
Q10. 検査後はすぐに帰れますか?
A10.
鎮静剤を使用した場合は、ふらつきや眠気が残るため、30分〜1時間程度お休みいただいてから帰ります。ご自身での運転はできません。
公共交通機関をご利用いただくか、ご家族の送迎をお願いしています。
鎮静剤を使用しない場合でも、しばらく院内で安静にしていただく時間が必要です。
Q11. 費用はいくらくらいかかりますか?
おわりに
大腸カメラは、大腸がんをはじめとする疾患の早期発見・予防にとって非常に重要な検査です。
不安に感じる方も多いと思いますが、できるだけ安心して受けていただけるように、当院では丁寧な説明ときめ細やかな対応を心がけています。
ご不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。
参考文献・ガイドライン
- 日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡検査ガイドライン」2020年改訂版
- Rex DK, Boland CR, et al. “Colorectal cancer screening: recommendations for physicians and patients from the U.S. Multi-Society Task Force.” Am J Gastroenterol. 2017;112(7):1016–1030. DOI: 10.1038/ajg.2017.174
- Lieberman D, et al. “Colonoscopy: back to the future.” Clin Gastroenterol Hepatol. 2020;18(12):2677–2679. DOI: 10.1016/j.cgh.2020.05.025