はじめに
大腸カメラ(正式には「下部消化管内視鏡検査」)は、大腸の粘膜を直接観察する検査です。
ポリープやがんの早期発見にもつながるため、特に40歳以上の方や、便に血が混じる・便秘と下痢を繰り返すといった症状がある方などが対象となります。また、検診で行われる便潜血検査の精密検査は大腸カメラにて行います。
大腸カメラの大きな目的は大腸がんの発見や予防です。
はじめてのカメラのため、不安がある。大腸カメラについて不明点があるという方もいらっしゃると思います。以下では、患者さんからよくいただくご質問にQ&A形式でお答えしていきます。
大腸カメラのQ&Aについて
- 大腸カメラはどんな検査ですか?
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肛門から細長い内視鏡を挿入して、大腸(直腸〜盲腸)全体の粘膜を観察する検査です。
ポリープや炎症、出血、がんなどの異常を見つけることができ、必要に応じて組織を採取(生検)したり、ポリープを切除することもあります。詳しくはこちら大腸カメラ(大腸内視鏡)検査のご案内 当院では大腸カメラを行うことができます。検査は月、木、金でおこなっています。 炭酸ガスを導入しておりおなかの張りを軽減しているほか、鎮静薬をつかった検査も可能… - 痛くないですか?苦しくありませんか?
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以前は「つらい検査」という印象がありましたが、鎮静剤(眠くなる薬)を使用することで、ほとんど苦痛なく受けられることが多くなっています。
また、大変だった下剤の内服も、量が少ないものなどを選び出来るだけつらいところを減らしておこなえるように工夫しております。ただし、体質や腸の長さ、癒着の有無によって感じ方には個人差があります。ご希望があれば鎮静剤を使用することも可能ですので、事前にご相談ください。
- どんな人が受けたほうがいいですか?
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例を挙げると以下のような方は、診察で必要性があると判断された場合は大腸カメラによる検査が勧められます。
- 便に血が混じることがある
- 慢性的な便秘や下痢が続いている
- 体重が急に減った
- 腹痛や腹部膨満感がある
- 健診で便潜血が陽性だった
便潜血陽性や血便は基本的には大腸内視鏡での精査が推奨されます。その他の腹部の不調については内服治療の結果や治療に合わせて相談となります。
- 大腸カメラの事前に何か準備が必要ですか?
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大腸カメラは事前の準備が必要なため、事前に受診をして基本的には行います。
検査前日からの食事制限や下剤の内服、当日の下剤(腸管洗浄剤)の服用が必要です。
腸内をきれいにすることで、粘膜をしっかり観察できるようになります。検査を行う場合には準備の方法は、当院から詳しく説明し資料をお渡しします。 - 大腸カメラの検査にかかる時間はどれくらいですか?
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大腸カメラの検査自体の所要時間は15〜30分程度が多いです。
ただし、前後に着替えや鎮静剤の準備、回復時間を含めると、1〜2時間程度が必要になります。また、下剤を院内で内服する場合は午前中いっぱい~午後までかかります。
- 大腸ポリープが見つかったらどうなりますか?
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その場で切除できる大きさ・形状のポリープで切除が必要なものであれば、検査中に切除することが可能です(ポリペクトミー)。大きすぎる、癌が強く疑われるなどあれば総合病院へ紹介するケースもあります。
切除後は出血を防ぐために、数日間の運動制限や飲酒制限などをお願いすることがあります。 - 大腸カメラの検査にリスクはありますか?
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一般的には安全性の高い検査ですが、ごく稀に以下のような合併症が起こることがあります。
- 腸に穴があく(穿孔):約0.01〜0.1%
- 出血(特にポリープ切除後):約0.1〜1%
- 腸閉塞(前処置による)
- 鎮静剤による呼吸抑制や低血圧
いずれも非常に稀ですが、リスクについては事前にご説明します。
- 大腸カメラは保険(1割〜3割負担)は使えますか?
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はい、症状がある場合(便潜血陽性・腹痛・下痢など)や、医師が必要と判断した場合は保険適用となります。
ただし、症状がなく健康診断目的(自費)の場合は、保険外診療となりますので、費用についてはお問い合わせください。 - 大腸カメラは生理中でも受けられますか?
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検査自体に問題はありませんが、できれば避けたほうが望ましいとされます。
出血によって体調が不安定になったり、トイレの頻度が増えるなどで下剤の服用がつらくなる場合があるためです。
可能であれば、別日に予約を変更しましょう。 - 大腸カメラは検査後はすぐに帰れますか?
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鎮静剤を使用した場合は、ふらつきや眠気が残るため、30分〜1時間程度お休みいただいてから帰ります。ご自身での運転はできません。
公共交通機関をご利用いただくか、ご家族の送迎をお願いしています。
鎮静剤を使用しない場合は、検査結果の説明後帰宅頂けます。 - 大腸カメラは費用はいくらくらいかかりますか?
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院で行う大腸カメラは保険診療であるため、費用に関しては、処置に対する国で定めた保険点数のため、他の医療機関と変わりはありません。
検査の費用は
検査内容 1割負担 3割負担 大腸カメラのみ 2,000円程度 5,000〜6,000円程度 大腸カメラ+生検 3,000円〜5,000円程度
(個数によります)10, 000円~20, 000円程度
(個数によります)大腸カメラ+ポリープ切除 7,000円〜9,000円
(個数によります)2,1000円〜27.000円
(個数によります)程度になります。また、鎮静の有無(数百円程度)や切除したポリープ数や処置の個数により金額には前後があります。
おわりに
大腸カメラは、大腸がんをはじめとする疾患の早期発見・予防にとって非常に重要な検査です。
不安に感じる方も多いと思いますが、できるだけ安心して受けていただけるように、当院では丁寧な説明ときめ細やかな対応を心がけています。
ご不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。
参考文献・ガイドライン
- 日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡検査ガイドライン」2020年改訂版
- Rex DK, Boland CR, et al. “Colorectal cancer screening: recommendations for physicians and patients from the U.S. Multi-Society Task Force.” Am J Gastroenterol. 2017;112(7):1016–1030. DOI: 10.1038/ajg.2017.174
- Lieberman D, et al. “Colonoscopy: back to the future.” Clin Gastroenterol Hepatol. 2020;18(12):2677–2679. DOI: 10.1016/j.cgh.2020.05.025