はじめに:なぜ「禁煙」なのか?
たばこをやめること、それはただの「習慣を変える」ことではありません。
あなた自身の健康、そして大切な人たちの命を守る、力強い選択です。禁煙をすることで血圧の治療になったりとさまざまな体へのメリットがあります。
この記事では、禁煙によってどんな健康効果が得られるのか、そしてどうすれば禁煙に成功できるのかを、医学的な根拠とともにわかりやすく解説します。
禁煙によって得られる健康効果
禁煙が大切とはなんとなくは感じてらっしゃる方も多いと思います。では具体的にはどのような健康的な効果があるのでしょうか?
心臓病や脳卒中のリスクが大きく下がる
たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素は、血管を傷つけ、動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳卒中の原因になります。
しかし禁煙すると、わずか1年で心臓病のリスクが約半分にまで減少します。15年経つと、非喫煙者とほぼ同じレベルにまで回復するとされています。
呼吸器の病気を防ぎ、息切れや咳が改善
たばこは慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主な原因であり、肺がんのリスクも高めます。禁煙すると、肺の働きが徐々に改善し、息切れや咳、痰といった症状が軽くなっていきます。肺の機能が回復しやすいのは、できるだけ早く禁煙を始めた場合です。
がんのリスクが下がる
たばこは肺がんだけでなく、口腔、喉、食道、膀胱など、多くのがんの原因になります。禁煙を始めて10年が経つと、肺がんで亡くなるリスクが、喫煙を続けた場合の半分以下にまで減ると報告されています。
血糖値や血圧も安定しやすくなる
喫煙は血糖値を不安定にし、高血圧の原因にもなります。禁煙すると、インスリンの働きが改善し、糖尿病の管理もしやすくなります。また、血圧も落ち着きやすくなり、生活習慣病の予防につながります。
このように禁煙をすることでのメリットはみなさんが想像しているようもすごいです。
禁煙後の体の変化(時間ごとの変化)
禁煙を行うとこのような変化が起こるとされています。*厚生省のサイト参照
- 20分後:血圧と脈拍が正常に戻りはじめます。
- 8時間後:血中の一酸化炭素が減り、酸素濃度が改善します。
- 24時間後:心臓発作のリスクがすでに低下し始めます。
- 2〜12週間後:血液循環が良くなり、肺機能も改善していきます。
- 1年後:心臓病のリスクが約半分に。
- 2〜4年後:虚血性心疾患のリスクが35%低下する。脳梗塞のリスクも下がる
- 5〜15年後:脳卒中のリスクが非喫煙者とほぼ同じに、肺がんのリスクも大幅に減少します
とされています。これほどに禁煙は大きな健康へのメリットがあるとされています。
また、当然ではありますが、禁煙すればタバコにかかる費用も減少するため、金銭的な負担も減ります。また、禁煙することで治療中の無服薬が減ればさらに負担が減る可能性があります。
禁煙を成功させるには?
禁煙はなかなか成功しない。そんな方もいるでしょう。
医療機関のサポートを活用しましょう
「自力ではやめられない」と感じている方も多いでしょう。しかし、禁煙外来では、薬やカウンセリングを用いて、あなたに合った禁煙方法を一緒に考えます。ニコチンパッチやバレニクリンなどの薬は、離脱症状をやわらげ、禁煙成功率を高めます。
家族や職場の協力が力になります
禁煙を始めることを周囲に伝えることで、支えてもらいやすくなります。パートナーや職場の人の応援は、禁煙の継続に大きな力となります。自分だけのためならやめられなくても、家族のためなら。。とチカラになる方もいるでしょう。
再喫煙しても諦めない
一度失敗しても大丈夫です。禁煙は何度でもチャレンジしてよいのです。むしろ、失敗した経験が次の成功につながることが多いとわかっています。
自分だけでの禁煙が難しい場合には是非ご相談ください。
よくある質問のQ &A
最後に禁煙に関してよくある質問についてまとめます。
- 電子タバコなら吸ってもいいですか?
-
電子タバコもニコチンや有害物質を含んでいることがあります。長期的な安全性は確認されていません。禁煙を目指す中で一時的に使うケースもありますが、完全な禁煙を最終目標とすることが大切です【8】。
- 禁煙するとストレスがたまるのでは?
-
たしかに、初期にはイライラや落ち着かない感じが出ることがあります。でも、長期的には体調が良くなり、むしろストレスが減ったと感じる方も多くいます。軽い運動や深呼吸、十分な睡眠なども併せて心がけましょう。
- 禁煙を行うにはどのようにしたらいいですか?
-
「一人でがんばらず、医療のサポートを受けること」が成功のコツです。
禁煙を始めるには、次の3つのステップが効果的です:
- 「やめたい」と思った気持ちを大切にする
まずは本数を減らすだけでもOKです。 - 禁煙外来を受診する
ニコチン依存症の診断とともに、補助薬(ニコチンパッチや飲み薬)が処方されます。これにより成功率が約2〜3倍に上がると言われています。 - 周囲に宣言する&サポートを得る
家族や職場の協力があると、失敗しても再チャレンジしやすくなります。
- 「やめたい」と思った気持ちを大切にする
おわりに
禁煙は、自分自身の健康を守るだけでなく、家族や職場の人、大切な人たちの健康にもつながります。「いつかやめたい」と思っているなら、今こそが最善のタイミングかもしれません。
みどりのふきたクリニックでは、禁煙に取り組む皆さまを全力で応援しています。まずはお気軽にご相談ください。
参考文献
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- Scanlon PD, et al. (2000)Smoking cessation and lung function in COPD.NEJM.
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- Fiore MC, et al. (2008)Treating Tobacco Use and Dependence: 2008 Update.
- Hughes JR, et al. (2004)Shape of the relapse curve among untreated smokers.Addiction.
- National Academies of Sciences (2018)Public Health Consequences of E-Cigarettes.
- https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/tobacco/t-08-001