検診で引っかかったり、採血結果で異常値を言われることが比較的多い肝機能ですが、もしかしたらその中に重大な病気が隠れているかもしれません。
今回は肝障害がある方がなぜ精査や専門医を受診した方が良いかを解説します。
肝機能障害とは
肝臓は体内で非常に重要な役割を担っています。
肝臓は消化・代謝・解毒など、私たちの健康を保つために欠かせない機能を果たしており、そのため肝臓に何らかの異常が生じると、体全体に悪影響を及ぼす可能性があります。肝機能障害はその名の通り、肝臓の働きが低下した状態を指し、採血ではAST、ALT、γGTPなどがそれにあたります。
肝機能障害の怖いところは初期段階では症状がほとんど現れないことが多いため、気づかないうちに進行してしまうことにあります。
肝機能障害の原因
肝機能障害にはさまざまな原因があり主な原因としては、以下のようなものがあります。
- ウイルス性肝炎(B型・C型肝炎ウイルスなど)
- アルコール性肝障害
- 脂肪肝
- 薬剤性肝障害
- 肝臓に関連する遺伝的疾患(ウィルソン病など)
- 自己免疫性肝疾患 etc
以前はアルコールやウイルス性肝炎というB型肝炎、C型肝炎などウイルスによる肝障害、肝硬変が多かったですが、最近生活習慣の影響などによる脂肪肝由来の肝障害も増えてきています。
検診で検査異常となる方も多くが脂肪肝(MASLD/ MASH)に当てはまります。
肝機能障害が継続すると肝硬変となり、肝硬変が進行すると癌の発生、腹水、黄疸、脳症(意識障害)等を起こすようになります。ここまで進行すると症状と付き合っていく治療となってしまうため、早期に発見、原因を特定し治療を行うことで肝硬変にしないようにすることが大切なのです。
奈良宣言
2023年には肝臓内科学会から奈良宣言という
一般的な健康診断でも肝機能検査として血液検査で広く測定されているALT値が30を超えていた場合、まずかかりつけ医等を受診することを勧める
宣言が出されました。
上でも述べたように肝臓は症状がなく悪化している可能性があり、当てはまる人には受診が推奨されます。
脂肪肝のある方でもFIB-4 indexが1.3以上あれば肝繊維化(肝硬変になっている)の可能性があり消化器内科などの専門医への受診が推奨されています。
FIB-4 indexは採血結果があれば自分でも計算することができます。
↓参考サイト
生活習慣の改善と治療法の選択
肝機能障害が進行すると、肝硬変や肝不全を引き起こす可能性がありますが、早期に診断され、原因に応じた適切な治療を受けることで、肝臓のダメージを最小限に抑えることができます。
(ウイルス性肝炎なら内服治療、アルコールなら節酒、禁酒、脂肪肝なら食事運動療法等)
また、肝機能障害が進行していない段階で治療を開始することが、肝硬変や肝臓がんなどの深刻な合併症を予防するために重要です。早期の治療や生活習慣の改善により、肝臓の健康を保つことができ、肝臓にかかる負担を軽減することが可能です。
定期的な検査とフォローアップの重要性
肝機能障害が疑われる場合や、肝機能検査の異常が指摘された場合には、精密検査を受けることが推奨されます。精査の内容としては、主に血液検査(採血検査)や腹部エコーによる肝障害の原因検索と現状の評価です。
一度検査をして異常がなかったとしても、悪化がないか、癌の発生がないかを見るために定期的な検査を受ける必要があります。
結論
肝機能障害は早期に発見し、適切な治療を行うことが、肝臓の健康を保ち、健康を守るために非常に重要です。肝臓の異常は、進行する前に発見し、治療を開始することで、重篤な状態に至るリスクを大幅に低減できます。
もし、肝機能障害が疑われる場合や、定期的な検診で異常が見つかった場合は、ぜひ早期に精査を受けることをお勧めします。肝臓は私たちの体にとって非常に重要な臓器であり、その健康を守るために早期発見・早期治療がカギとなります。
当院でも肝障害の診療を行っております。検診に引っかかった方や肝障害を指摘された方などはぜひ一度診察、精査を受けることをオススメします。
※肝障害の精査には対面での診察が必要です。