コレステロールは善玉か悪玉か

医師会健診センターMEDIOの作成したラサンテに投稿した文章の第2弾です。

平成28年6月11日発行の週刊現代が「医師に出されても飲み続けてはいけない薬」という記事を掲載しました。この記事は評判になり週刊現代は爆発的に部数を伸ばしたため、第2弾、第3弾と続編を打ちました。この記事が内科の診察室に大混乱を巻き起こし、我々をたいそう苦しめたのでした。

世界からの多数の論文でコレステロールは「the lower 、the better」と報告されており、米国の医学会も心筋梗塞を減らすために積極的さげることを奨励しています。日本の内科医もスタチンと呼ばれる薬を処方して、大いに治療しています。しかしその記事を読んだ患者さんは週刊誌を信じて主治医と揉めることになりました。週刊誌を主治医より信用してしまう患者さんの心理には悲しみを覚えますが、印刷されたもの、テレビで放映されたものは正しいと信じる傾向が強いようです。フェイクニュースが多数含まれているのですが。

ではなぜこのような事態になったのでしょうか。LⅮLコレステロールはLDLという脂肪の玉(リポ蛋白)に含まれているコレステロール量のことですが、実はLDLは大きさにより大粒子と小粒子に分けられます。粥状動脈硬化病変に存在する悪いLDLは酸化して変性したLDLですが、小粒子のLDLのほうが圧倒的に酸化されやすいのです。つまりLDLコレステロールが高くても大粒子が多い人は治療しなくても動脈硬化は起きません。その人たちを取り上げて、高くても大丈夫だとマスコミは言っているのです。ところが家族性高コレステロール血症と言われる人たちは間違いなく心筋梗塞の危険にさらされることとなります。

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